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時の彩り(ラスト・ラン) 172

2014.11.20 小林康夫

★パリにいます。主要目的は、今年度UTCPに与えられたいわゆる「卓越」予算(卓越した大学院拠点形成支援)をつかって、大学院生の研究発表会を組織するためです。最近はこの種の特別予算が「降って」くることがあるのだけど、わたしとしては一貫して、これは、学生たちに海外の研究機関で研究発表することで自分自身を国際的な場におく経験をさせることが目的なのだから、教員がそれをオーガナイズできなければならない、それこそが「卓越した拠点」の存在理由であると主張しています。それゆえ、これまでも昨年のソフィア、今年春のパリ(第8大学)と積極的にそれをオーガナイズしてきました。
 さすが、定年直前で、9月のラ・トゥーレット研修旅行でそのような国際的教育活動は打ち止めにしたはずでしたが、今回の予算に対して、やはりヨーロッパの研修があっても然るべきと、つい友人のパリの高等師範学校のドミニック・レステル教授に、「協力してくれない?」と声をかけた経緯があって、学生たちとともに11月のパリにいるわけ。出発前のひと月半の「ラスト・ラン」が結構、激しくて、疲れがどっと出たというべきか、飛行機のなかも、パリに着いても、寝こけている状態が続いていましたが、なんとか体調は戻ってきたので、今日これからの発表会、パリの学生たちも含めた若い研究者たちの舞台を見届けてこようと思っています。

★パリに着いて、たしかに寝こけている時間が多かったのですが、ジャン=リュック・ナンシーと(たぶんはじめて!)ふたりだけでお茶をいっしょに飲む時間がもてたことは、刺激的で楽しかったですね。かれは、ちょうどソルボンヌで700頁にも及ぶジャック・デリダについての博士論文の審査をしてきたところ。10歳年上のはずなのに、わたしより全然、元気。ざっくばらんに最近考えていることなどを話しあって、わたしとしては、なにかが確かめられた感覚をもちました。また春に、今度はストラスブールでお会いしようか、と話したところです。しかし予定を決めるために、スケジュールをきくと、いや、パリはもとより、ギリシア、ベルギーと予定はぎっしり。ヨーロッパを駆け回ることになっています。日本にもまた来たいという希望も語ってくれました。わたしもこれくらいで、へたれているわけにはいきませんね。
 もうひとつ。9月に時間がなくて観れなかったポンピドゥーセンターの「マルセル・デュシャン」展も観てきました。よく出来た、いい展覧会でした。わたしの知らない作品も展示されていました。人生で最初にパリに来たのが78年だったか、このポンピドゥーセンターのオープニングの「マルセル・デュシャン」展であったことを思い出しました。フルテン館長のところに日本からポスターもって行ったなあ、とか。あれから30余年・・・「日々はすぎさり、わたしはとどまる」です。どんよりとした雲が立ち籠めて、遠いエッフェル塔は上半分が雲に隠れていました。Faut-il qu’il m’en souvienne, la joie venait toujours après la peine ? ちょっと感傷的、まあ、たまにはいいかな。

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