ご挨拶

 

UTCPの新たな展開のために

表面的で、ひどく偏った〈繁栄〉のもとで、人間の〈危機〉は深刻です。それが果たして、単純に〈人間の危機〉であると言ってすますことができるかどうかすら疑わしいほどに、深刻です。

一方には、グローバリゼーションのもとでの、地球的規模での巨大な科学・技術・経済・政治・文化の——矛盾や対立、葛藤なしにではない——アマルガム的ダイナミズムがすさまじいもとで、〈人間〉はいったいどこに行ってしまったのか。百数十年前にニーチェが厳かに〈神の死〉を確認したように、われわれは、早くも〈人間の死〉へと備えなければならないのでしょうか。だが、〈人間〉とは、それがどのように考えられるのであれ、まずは、〈ともに生きる〉存在です。その〈ともに生きる〉の地平を、今日、どのように拓くのか、——それこそが、われわれの究極的な問いかけです。この問いかけは、さまざまな異質な分野、異質な文化を横断して問われるべきものです。つまり、根源的な対話へと開かれてあるべきです。

われわれは、この10年間、文部科学省の21世紀COEとグローバルCOEの援助を得て、われわれの問いかけを、国際的な〈対話〉を通じて深化させるべく、世界の〈哲学〉のネットワークを構築してきました。今回、この基盤の上にたって、新たに東京大学大学院総合文化研究科・教養学部附属のセンターとして、より継続的な研究プログラムを具体化することになりました。

UTCPが世界の歴史の現在を凝視しつつ、〈危機〉としての〈人間〉そのものに問いかける開かれた対話の場所となるように、わたしも決意を新たにしています。


--小林康夫



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