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【報告】「摂食障害をかかえて生きる」第2回「恋愛、パートナーとの関係」

2022.04.06 山田理絵

 2022年3月27日(日)、シリーズ企画「摂食障害をかかえて生きる〜当事者・経験者と考える、社会生活やライフイベントとの向き合い方」第2回「恋愛、パートナーとの関係」が開催されました。

 このシリーズ企画の趣旨や概要については、こちらをご覧ください。
 また、シリーズ第1回(3月5日)の開催報告はこちらをご覧ください。

 第2回のパネリストは、おちゃずけさん、吉野なおさん、みせすご夫妻、の4名でした。このシリーズ企画は、会場での開催をzoomで配信するというハイブリット方式で開催していますが、今回は会場で6名、zoomで50名ほどの方が参加してくださいました。
 前半の2時間で、パネリストの自己紹介とパネルディスカッションが行われました。パネルディスカッションのテーマは、①恋愛や結婚などを機に摂食障害が回復していくと思うか、②恋愛をするのは、摂食障害をかかえたままでも大丈夫だと思うか、回復してからの方が良いと思うか、③パートナーに摂食障害のことをカミングアウトするか、しないのか、④摂食障害の症状があるとき、どのようにパートナーと付き合っていくか(パートナーにはどのように接してほしいか、パートナーには何ができるのか?)、⑤回復途中や後にも共通することとして、パートナーとうまくやっていくコツはなにか、の5点でした。
 ここからは、摂食障害を経験した3名と、パートナーの立場の方1名を含む、パネリスト4名から語られたお話を5つのテーマ別にご紹介します。

            ■パネリストのご紹介■

・おちゃずけ:回復後に現在のパートナーと結婚。結婚後20年。
・吉野なお(Nao):回復後に現在のパートナーと出会い、4年ほど同居。
・みせす:症状は寛解しているが、回復する前に現在のパートナーと結婚。
・みせす旦那:みせすが摂食障害の闘病中であることを知っていて、彼女と交際。結婚後の生活で摂食障害の影響をうける。

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Q1. 恋愛や結婚を機に摂食障害は
  [回復する] or [回復しない]
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おちゃずけ:どちらでもない、人それぞれだと思います。
私の場合、結婚後の、妊娠、出産、子育てと様々な変化のたびに摂食障害が顔を出しました。しかし、自分自身が精神的に成長していったことと、パートナーや子どもが居てくれたおかげで、以前のように深みにはまらず、引き戻ることができました。
摂食障害を恐れずに、人生のコマを進めて欲しいと思います。

Nao: 私もどちらでもない、と思います。恋愛や結婚をきっかけに回復に向かうかどうかは、人によると考えています。
私が摂食障害を経験していた15年くらい前は、当事者の経験談として、いいパートナーに出会ったり結婚したりしたら摂食障害がよくなりました、という内容を聞くことが多かったように思います。こうした変化に、私も憧れていた部分はありました。でも私の場合は、いいひとに出会っても変わらなかったので、自分はそこじゃないんだと気づきました。
他方で、回復した人のお話をうかがっていると、いいパートナーに出会って、とことん付き合ってもらって、少しずつ回復していったという方もいます。だから、回復するかどうかは人によると思います。

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左から、おちゃずけさん、吉野なお(Nao)さん。


みせす: 回復すると思います。私の場合ですが、主人に出会ったことで体型のような外面の美しさではなく、心や考え方などの内面を含めた人間性を認めてもらうことができました。たった1人の人ですが、支えてもらうパートナーができることで、自分に自信をもち、回復への大きなきっかけとなりました。
ただ、注意があります。恋愛や結婚して順調だったといえども、ウェディングドレスのためのダイエットをしたり、新婚生活での食事のストレス、妊娠による体重や体型変化などもあり、再発のリスクもありました。また、元彼氏とお付き合いしていたときは精神的に不安定で毎日数時間電話し、LINEで既読がつかないと不安になるような恋愛依存をしていた時期もありました。このように恋愛や結婚で一概に回復する、とはいえませんが、他方で現在のパートナーとの出会いは私にとって回復の大きなきっかけになったと思っています。

みせす旦那: どちらでもないと思うのですが、限りなく「回復しない」の方に近いかなと考えています…パートナーとしてはちょっとどうかと思いますが(笑)。
パートナーの立場として、基本的には何もできることはないという感覚があります。結婚という出来事や自分の存在自体が、妻の回復に繋がったとは思っていないですね。もし結婚というきっかけで回復したというのならば、それは本人の価値観とか考え方が変わったからだと思います。結婚を機にこうした変化があって「自分で回復する」、ということだと思います。
あと個人的には、相手が回復する/しないということをあまり意識していないというのが自分なりの向き合い方です。

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Q2. 恋愛をするのは
  [摂食障害をかかえていてもOK] or [回復してからの方が良い]
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おちゃずけ: かかえていてもOKだと思います。理由は上記(Q1)と同じです。

Nao: どちらでもない、中立の立場です。摂食障害をかかえていてもOKな場合もあるし、かかえていると大変なこともあると思います。私も実際、摂食障害がある状態での恋愛で、大変な経験をしました。でも、人によるし、その人の状況にもよるので難しいですね。
あと、恋愛は1人で完結することではなくて、相手と自分の関係性で成り立つものなので、相手がどういう人かも関係してくると思います。

みせす: かかえていてもOKだと思います。
実は私のtwitterなどで、このことに悩んでいる方から質問を多々いただきます。
片思い中の方から告白されたとき、また好きな人が見つかったとき、病気だからといって諦める必要はないと私は思っています。私自身、症状があるときに今の主人と出会いましたが、ただ1人の人から愛されたことで、体型へのコンプレックスを克服できました。
また、体型や美しさではなく、内面を認めてもらえたことは大きな自信へとつながりました。摂食障害が治ってからも再発するリスクはありますし、いい人にいつ出会えるかもわかりません。そんな理由から摂食障害を抱えていても恋愛してもいいと考えています。

みせす旦那:パートナーの立場からすると、もちろん「かかえていてもOK」だと思います。しかし、症状に日々苦しみ、悩んでいる方にとって、「かかえていてもOK」というのは綺麗事かもしれないとも思います。恋愛は、相手に自分の全てを見せても良いのかという葛藤を含みますが、もし、摂食障害をかかえる方が症状を恥ずかしいことと感じている場合は、恋愛はとんでもなく苦しいことだということも分かります。
ただ、それでも「かかえていてもOK」という理由が2つあります。1つは、おちゃずけさんが言ったように、症状をかかえたままでも一歩踏み出して、いろんな経験をしたり自分の世界が広がったりすることで、考え方や受け取り方が変わって、症状がよくなっていくこともあると思うからです。
もう1つは、パートナーの立場からすれば、相手の摂食障害の症状とは別に、その人自身の人格を見ているからです。私は個人的に、摂食障害の症状は、その人の人格とは別であると考えています。摂食障害をかかえていたとしても、その方が自分の人格を誇りを持って相手(パートナー)に見せていけば良いと思います。そうすれば、パートナーの立場から、相手(摂食障害をかかえた人)の人格をきちんと見る人がいると思っています。

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みせすご家族。

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Q3. パートナーに摂食障害のことをカミングアウト
  [する] or [しない]
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おちゃずけ: どちらでもOKだと思います。
私の場合はカミングアウトしませんでした。理由は、既に摂食障害の症状が収まって久しかったことと、摂食障害であった自分も含めて自分だったと受け止めてもらっていると感じていたからです。
一方で、このイベントで、みせすの「摂食障害を含む精神疾患は、未だ社会からの偏見がある、それを言わないことはパートナーに対する後ろめたさがある」との意見も大変によく理解できました。
 
Nao: 私はカミングアウトする方を選びました。浅い関係であれば言わなくてもいいと思いますが(笑)、この人と向き合うと決めた場合は話したほうがいいと思います。
ただ、話すタイミングは考えた方が良いかもしれません。関係性がある程度できてきて、お互いに、どういう人なのかが分かってきた状態で話した方が良いと思います。出会ってすぐに「摂食障害なんだ」と伝えた場合、相手によってはびっくりしてしまう場合もあるかもしれません。もしかしたら、フェードアウトする人もいるかもしれませんね。カミングアウトによってこのような経験をすると、摂食障害のご本人はとても傷つくのではないかと思います。
でも、摂食障害であることにしっかりと向き合ってくれる人もいます。そういう方は、摂食障害であることを否定せずにお話を聞いてくれると思います。

みせす: カミングアウトする方を選びました。私の考えですが、カミングアウトしたほうがデートや結婚生活で過ごしやすいと考えています。というのも基本的に人間は1日3食食べるわけで、隠し通せなかったりいずればれてしまう可能性もあります。
ただ、いきなりカミングアウトすると、人によって病気への理解が違ったり、偏見を持たれたりすることもあります。そのため、段階的に「持病があって食べることが難しい」、「ドクターから食事の内容に指導を受けている」などと言った曖昧な伝え方からしていくことが個人的なおすすめです。あくまでも病気であり、自制がきくものではないことなどを伝えるのをおすすめしています。

みせす旦那: 私は、カミングアウトされた方がいいです。まず、食事のことを考えると、やはり避けては通れない問題なので。あと、相手が摂食障害をかかえているのであれば、それはおそらく相手が苦しんでいることですよね。個人的な考えとしては、その人と付き合っているのであれば、その状況を知るべきだし知りたいとも思います。
他方で、どちらでもいいかなと思う側面もあります。先ほど言ったように、私は、症状と相手の人格は別であると考えていますし、摂食障害だから付き合っているわけでもありません。また、相手の症状に対して何か言うべきこともないし、相手の食のことを自分が変えられるわけでもありません。
摂食障害も相手の一部だと思うので言ってもらったほうがいいかなとも思うし、どちらでも良いという部分もあるし…その中間ぐらいですね。

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Q4. 摂食障害の症状がある時、
-- 当事者はどうパートナーと付き合っていく?パートナーにどうして欲しい?
-- パートナーの立場の人に何ができる?
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摂食障害をかかえたまま誰かとお付き合いをすると、デートの食事など、否応がなく食と向き合わなければならないこともあります。そんな時どうすればよいかを、パネリストの皆さんにおうかがいしました。

おちゃずけ:自分の気持ちを伝えることが大事ではないかと話しました。
もともと、自分の気持を表現することが苦手な私たちではありますが、私が結婚生活で学んだことの大きなひとつは「言葉で伝えなければ、なにも伝わらない」ということです。『察して欲しい』、『一緒に生活していればわかるでしょ』は全く無理。
恋愛や結婚は「言葉にして気持ちを伝える」良い訓練になると思います。がんばって欲しいです。

Nao: パートナーの立場の方には、本人がどうしたいかを聞いてあげてほしいなと思います。食べ物に限らず、どこに行きたいとか、何がしたいとか、何が好きとか。そういう本人の気持ちを聞いてあげることが大事だなと思っています。
私は以前、モラハラの人と付き合っていた時期がありました。その人は、私の好きなものや選択を否定してきました。その経験があったので、私は自分のジャッジに自信がなかったんですね。その後、ある時に、アメリカ育ちの人と一緒にご飯を食べに行く機会がありました。その時に、相手からどっちのお店に行きたい?と聞かれたのですが、私は「どっちでもいいよ」と答えました。でも、その相手は、「君の意見が聞きたいんだから、はっきりとどちらがいいか言ってくれた方が助かる」と言って、私に再度行きたいお店を確認してくれたんです。私の気持ちを尊重してくれました。そういった経験があって、自分の気持ちをはっきり言っても良いんだと思いました。
今のパートナーは、私が摂食障害から回復したあとに付き合った人です。パートナーはフランス人ですが、彼も自分の気持ちをちゃんと言ってくれた方が助かると言います。なので、ちゃんと自分の気持ちを伝えます。自分の気持ちを伝えて不快にさせたりしたこともありましたが、譲歩して結論を出そうとか、そういう出来事も経験して、話し合いができるようになりました。パートナーがいる方は、よく話し合うことが大切だと思います。

みせす: デートの時、私が食べる量を気にしないで欲しい、といった気持ちがありました。
私の摂食障害の経験では、拒食の時は食べる量が少なく、過食の時はびっくりするくらい食べてしまうことがあります。また気を許した人の前でないと食べることが怖いということもありました。デートをする際に、男性がレストランを決めてエスコートするなどの風潮が一部残っていますが、私の場合は食べるところや場所を選ばせて欲しい、と伝えていました。カロリーの高い高級フレンチのフルコースや、がっつり油の乗ったラーメンなどは避けていたからです。具体的にはデートをする際に、事前に入る飲食店の候補を二人で見たり、彼(主人)が決める際は、飲食店や食べたいものの選択肢を2、3つ出してもらってから決めたりしていました。
また、彼(主人)の前で過食嘔吐の症状が出た時もあります。過食や過食嘔吐の症状は無理して我慢してもその反動で後日余計に悪化してしまうこともあり、意志ではどうにもならない病気です。だからこそ、その行為に対しては何にも言わないで欲しい、無理に止めないで欲しい。一方で矛盾しているようですが、だからといって呆れて離れることなく、そばにいて欲しい、背中をさすって欲しい、という思いがあり、伝えていました。
私の場合、仕事や人間関係などでストレスがかかると摂食障害が悪化するので、日々の会話の中で辛い思いを吐き出す、そんなこともプラスになりました。

みせす旦那: 妻と付き合っている時に、彼女が摂食障害だというのは知っていましたが、症状の性質とかは全然知リませんでした。で、実際に彼女に症状(過食嘔吐や不眠で寝られない、過呼吸)があったとき時は、背中をさするくらいしか…。申し訳ないとは思いますが、やはり私は基本的に、相手の症状に関して何もできることはないなと思っていました。
背中をさすっていても、相手がすごくかわいそうで苦しい…とはなっていないです。自分がその症状に直接苦しんでいるわけじゃないですし、あと、もし自分が倒れたらどうしようもなくなってしまうので。意識して何かをしていたというよりは、そばにいてあげることはできるなと思っている感じです。ただ、気をつけていることとして、相手に対して直接何かができるという感覚を持たないようにしています。これは、妻との関係以外の、様々な人間関係でも基本的に同じように考えています。

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Q5. 回復中・回復後にも共通していえる、
パートナーとうまくやっていくコツは?
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誰かとお付き合いすること、同棲や結婚などで他人と共同生活をすることには、ストレスも伴います。回復後、回復前にかかわらず、パートナーとの関係で生じる様々な難しさに直面した時、どうやったらいい関係が築けるのか、そのために意識していることは何かをパネリストに聞きました。

おちゃずけ: 前述したことと重なりますが「気持ちを相手に伝える」ことに尽きると思います。

Nao: おちゃずけさんのご意見、本当にそうだと思います。
それに加えて、お付き合いなどをしている相手の行動について、相手が言っていないことまで想像、推測して決めつけないことも大切かと思います。例えば、「相手の機嫌が悪いのは私のせいじゃないか」とか、「連絡くれないのは私のことが好きじゃないからかも」とか。以前私は、そのように余計なことを想像して、相手との間に齟齬が生じたことがありました。また、自分で勝手に想像したことに悩んで自暴自棄になり、過食などをしたこともありました。
いまは、想像で相手の気持ちを決めつけてしまうのではなく、相手とちゃんと対話をすることが大切だと考えています。対面や電話など、リアルタイムで話ができる時に会話をして、その時に、相手の行動の理由や、自分の言葉・行動の意図を言葉で説明すると良いと思います。
ただ、なかなか難しい場合もあるでしょう。私は、摂食障害の時、自分の気持ちというものが分からなかったんです。言葉にできなくって。むしろ、それとは逆に、何を食べたらいいのか、何を話せば正解なのか、何を言えば相手が喜ぶか、正解をずっと求めていました。相手が傷つかいないようにとか、嫌われないようにとか、そういうことを考えていました。その理由として、ダイエットという外から持ってきた方法を「正解」として自分に取り込んだ一方で、自分の気持ちはだめだ、とブロックしていたからではないかと考えています。その後、「言葉を得て」、私は変わったと思いますね。言葉を得れば大丈夫だと思います。そのきっかけとして、自分がどう思っていたのか、相手に何を伝えたかったのかについての会話は本当に大事だと思います。

みせす: 私は精神科の主治医に結婚の報告をしたときに、アドバイスを言われました。そもそも赤の他人同士が共同生活を送るから、精神的に何もない人でも結婚には多少のストレスがある、と。それを聞いて、確かに全く違った人生を生きてきた2人が共同生活を送るってそれだけで大変な行為だなと思いました。最近気をつけていることは、できるだけ言葉に出す、ということ。辛いときはつい独りよがりになってしまいがちですが、全てをわかってもらうと思わず、自分の気持ちを伝えていくことを意識しています。具体的には、今調子が悪いと伝えたり、辛い時はこうしてほしい、と、具体的に求めている行為を伝えて支えていただいています。

みせす旦那: みなさんがおっしゃっていた通り、私が心がけていることにも、相手が「他人である」ということがベースにあります。
ただ、相手とコミュニケーションをとろうとする時に、「他人だから」の切り捨てでは対応できないこともあると思います。あと、なるべく言葉にするということについても、なんでもかんでも言葉にすれば良い、自分の感覚をいえばいい、というわけではないなとも感じています。個人的に最近思ったこと、心がけていることといえば、このような相手とのコミュニケーションのごちゃごちゃや悩みを、一生続ける覚悟をするということかもしれません。
特に、摂食障害からの回復中や回復後である相手との関係の中で、パートナーとしてうまくやっていくコツは、繰り返しになりますが、相手の人格と症状とを分けて理解するということと、基本的に相手の症状に対して自分ができることはないと思って、過剰に反応しない、過剰に気にしないことでしょうか。とはいえ、相手の一部なので…うまい距離のとり方をすることが大切かなと思います。
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 パネルディスカッションの報告は以上です。
 その後に、zoomの配信を一時的に中止し、会場で参加者と登壇者が参加するグループ・ディスカッションが行われました。ディスカッションでは、イベントに参加した経緯や、「恋愛、パートナーとの関係」に関連した経験談やお考えなどが話されました。また、パネリストへの質問として、「他者から見られることや触れられることが怖い、避けたいと思う気持ちをもったことはありますか、あったとしたらどのようにその気持ちや他者と向き合って来ましたか」といった問いや、「経験や思いを語る「言葉を得る」までが難しいのではないか」という感想もあり、パネリストの経験や工夫などが共有されました。
 イベントの最後の30分では、zoomの配信が再開され、本日の振り返りと質疑応答が行われました。zoomを通じて振り返りに参加してくださった方々からも、ご自身の経験の共有や、イベントに対するコメントなどをしていただき、インタラクティブな時間となりました。参加者からの感想として、今回は、摂食障害をかかえる人の恋愛や結婚がテーマではありましたが、パネルディスカッションでは、障害や疾病の有無にかかわらず他者とパートナーシップを築いていくために大切なことが議論されていたという声や、恋愛関係やパートナーシップに留まらず、様々な「人との関わりの中でもつ不安全般に当てはまる内容だった」という声がありました。

 最後に、今回登壇してくださった吉野なお(Nao)さんからのコメントをご紹介します。

 「恋愛」と「摂食障害」について、私も深く思い悩んできたテーマだったので皆さんのお話を伺っていて、非常に興味深かったです。そして正解や答えは1つではなく、その人自身が人生を経験する中で判断していくものであり、人と答えが違っていいとも感じたので、「誰かの一例」を参考にし過ぎないことも大事なようです。
 他者と親密に関わろうとするとき、人は少なからず「自分とは違うギャップ」を感じるものだと思います。だから何より大切なことは「こうではないか」「ああ思われるかも」と勘繰るよりも、目の前にいる相手と向き合い、対話し、そのギャップを擦り合わせていく作業が出来る相手なのかどうか、まず勇気を出して知ることなのかもしれません。
 ご参加いただいた皆様、ありがとうございました!

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 シリーズ企画第3回(4月16日)は「学校生活、就活・はたらき方」をテーマに、当事者・経験者の方々にご登壇いただき、パネルディスカッションが行われる予定です。お申し込みはこちらのページをご参照ください。
 また第4回(4月23日)は、「クロージング〜摂食障害をかかえた私たちとまわりの人が生きやすい社会とは?〜」というタイトルで、摂食障害を含む「障害」や、障害の「当事者」に関連する学問的なトピックを学びながら、このシリーズの内容のまとめをしていく予定です。お申し込みは、こちらのページをご参照ください。
            (報告:おちゃずけ、吉野なお、みせす夫妻、山田理絵)


     ■イベント後記:企画者による、ご質問への回答コーナー■

山田: 終了後のアンケートでいただいたご質問の中から、いくつか、おちゃずけさんとみせすさんにおうかがいしてみたいと思います。1つ目は、ご飯を食べたくないときも、職場の食事の席では食べなくてはいけないといったことが、今もあるのではないかと思いますが、皆さんどうしているのでしょうか、というご質問です。
みせす: 今もあります! 実際には、食べられるだけ食べる、これにつきます。自分がどれくらい食事を残したか、相手はそんなに気にしていないと思いますし、どうしても気分的に食べられなかったらドリンクだけ、サラダだけ、スープだけにすることも。また食べられるメニューのあるお店を選ぶ(とんかつ屋ではなく軽食系のお店や、ビュッフェのあるお店など)、そういう場面をあえてつくらない(ランチに誘われてもお弁当を持ってきているというなど)の方法もあると思いました。

山田: 続いては、摂食障害によるお金の困難をどうしていますか?というご質問です。「買い物依存との関係」とも書いてくださっていますね。摂食障害によるお金の困難はよく語られる重要なテーマですね。その一方で、大変難しい問題ですし、人によって状況は違い、一概には言えない部分があると思うのですが、お二人のご経験などから何かコメントいただけることはありますか。
みせす: 私の場合は、どうしても過食の時はお金を使ってしまいます。ただそれは必要経費で、買うことで満足するのであれば使って良いのではと思っています。
おちゃずけ: これは、本当に難しいご相談だと思います。私の場合は、買うことを無理に抑えようとするとそれがかえってストレスになり、過食行動が酷くなる…ということがありました。また、知人には、食べ物を買うお金を抑えるため、節約を重ね、やがてクレプトマニア(窃盗症)に繋がっていってしまった人もいます。 買い物依存症との併発でも、お一人で改善していくのは本当に難しいと思います。信頼できる医療機関に相談できるといいのですが…。

山田: 最後は、幸せに生きるとはどういうことですか?というご質問です。摂食障害についての個別の経験をこえる、やや大きめの問いではありますが、もし何かお考えがあれば教えてください。
みせす: ご質問の背景が分からないので、解釈が違ったらごめんなさい。私にとっては、自分自身が生きていて心地よいこと、ではないかなと思います。特に「自分が」ということが大切で、やりたくないことを変な義務感でがんじがらめに生きるより、自分が好きなこと、大切にしたいことを大切に、自分の直感や心の声を聞いて生きることだと自分自身は思っています。たとえばもう少し食べたいな、と思ったら、みかんをおかわりする、など(今まさにこんな感じです)。
おちゃずけ: 「幸せに生きるとはどういうことですか?」、この質問をされた方の心の内に思いを馳せています。私たちが「幸せ」を感じるのはどういう時でしょうか?大好きな恋人や友人、家族とすごす時の「幸せ」、かわいい猫や犬と一緒に遊ぶ時の「幸せ」、美しい自然に接した時の「幸せ」、自分自身が昨日よりひとつ成長できたと感じた時の「幸せ」、「幸せ」を感じる形は、実に様々です。
・・・で、あるはずなのに、今の私たちは、他人と比較することで得られる「幸せ」ばかりに心を魅かれすぎていないでしょうか?何故なら、私たちは、幼い頃から、点数や数字によって優劣を決める教育を受けてきました。人より良い点数取れば褒められ、人より早く走ったり、上手く楽器が弾けたり、または、スタイルが良かったり…。比較され、それに勝つことで、得られる「幸せ」をばかりを、数多く体験してきました。それ故に、その「幸せ」形が印象づけられ、そこにこそ本当の「幸せ」があると感じさせられてきたのかもしれません。
でも、誰かより優れていることで得られる「幸せ」だけが全てではありません。
自分が本当に「幸せ」と感じることはなんなのか?他人と比べない、あなただけの「幸せ」をたくさん見つけてたくさん感じて欲しいと思います。
私は、このコロナ禍の中、猟犬を飼い始めました。猟犬と共に山の中を歩く素晴らしさを知りました。朝日に輝く木々と、鳥の声と、弾けるように走り回る犬の姿…その時感じる「幸せ」は言葉で言い尽くせません。これは、誰とも比べない、誰にも奪われない、私だけの「幸せ」です。質問者さんにも、きっと質問者さんだけの「幸せ」があります。どうか焦らずそれを見つけて下さい。
山田: お二人とも、ありがとうございました。
ちなみに私は、最後のご質問について、今回のシリーズ企画だからこそ挙がった問いであるように感じました。
この企画では、治療や回復の仕方に直接関係する情報や、それに関する医学・心理学的な視点よりも、摂食障害のご本人たちの社会生活や生き方などに焦点を当てています。もちろん、治療や回復に関する議論は大変重要で、いま摂食障害の症状でとても辛い思いをされているご本人や、周りの方々に切実に必要とされていることと認識しています。なので、もしかすると、そのような情報・視点が中心とは言えないこの企画に、やや物足りなさを感じられている方もいらっしゃるのではないかと思っています。
ただ他方で、「症状をどうするか」ということと直接結びつかないかもしれませんが、このシリーズ企画のなかで、摂食障害という経験について考えつつ、同時にそこから少し離れた場所から、「幸せに生きるってどういうことか」といった、ある種哲学的な問いについても、参加者の皆さんや企画者とで共に考え悩む時間を共有できたら、それはとても貴重なひとときになるのではないかと考えています。(イベント後記おわり)


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