西山雄二『異議申し立てとしての文学――モーリス・ブランショにおける孤独、友愛、共同性』
研究員の西山雄二の著作『異議申し立てとしての文学――モーリス・ブランショにおける孤独、友愛、共同性』(御茶の水書房、2007年)が刊行されました。装丁は同じくUTCP研究員の平倉圭が担当しました。
以下、趣旨説明文を引用しておきます。
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モーリス・ブランショは1930年代、右派ジャーナリストとして活躍していたが、次第に文学作品を創作し、独自の文芸批評を展開するようになる。彼は従来の西洋哲学に対して独自の思想を練り上げた思想家でもあり、1958-68年には今度は左派の立場から政治的な活動を行う。
ブランショの軌跡は文学・思想・政治を横断する複雑なものであり、彼の経歴を統一的に描き出すことは難しい。本書では「孤独・友愛・共同性」という視座を設定することで、彼の多彩な活動を概観し、その意義を包括的に解明する。
自らの肖像写真を公開しなかった「顔のない作家」ブランショは、沈黙や不在にもとづくその文学観から、しばしば、消失の運動を志向する文学-形而上学的な作家だとみなされてきた。これに対して、本書では、ブランショの思考が消失を目指す非人称的な運動に従うだけでなく、逆に、この非人称性を起点として「孤独・友愛・共同性」という多層的な人称世界を豊かに産出するものでもあることを明らかにする。ブランショの文学理論を彼の具体的な友情関係や現実の政治的コンテクストと関係づけることで、ブランショをできる限り具体的な現実のなかにおき、生き生きと描くことを試みる。