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【UTCP Juventus】吉田敬

2010.08.06 吉田敬, UTCP Juventus

【UTCP Juventus】は、UTCP若手研究者の研究プロフィールを連載するシリーズです。ひとりひとりが各自の研究テーマ、いままでの仕事、今後の展開などを自由に綴っていきます。2010年度の第3回目は特任研究員の吉田敬(科学哲学・社会科学の哲学)が担当します。

今年で三回目となったUTCP Juventusですが、私のこれまでの研究や経歴については、過去二年のUTCP Juventus(2008年版2009年版)や私自身のウェブサイトをご覧頂くことにして、ここでは、現在進行中のことがらについて記したいと思います。

現在進めているのは、UTCPで行ってきた、脳神経科学に関する哲学的研究と元々の専門である社会科学の哲学をつなげるような研究です。近年、神経経済学や社会神経科学などの脳神経科学の手法を用いて、人間の社会行動や社会制度を説明しようとする研究が注目を集めていますが、そうした研究と既存の社会科学の関係については、哲学的検討がほとんど行われていないように思われます。もし脳神経科学だけで社会現象が説明できるのだとしたら、社会科学は不必要だということになりますが、それはこれまでにも厳しい批判の対象となってきた還元主義でしかありません。確かに、行き過ぎた還元主義には問題があります。しかし、人間が脳を持った動物であることを考えれば、社会現象を説明するにあたって、脳神経科学を排除することも不適切であるように思います。とすれば、脳神経科学は既存の社会科学とどのような関係にあるのか、そして、脳神経科学以後の社会科学はどのように可能なのかといったことが問題になるわけですが、この問題については、8月25日から29日まで駒場で開かれる、Society for Social Studies of Science (4S)の年次大会において、"How is social science possible after neuroscience?"という題目で発表を行う予定です。

ところで、この4Sでは同時進行で多数のパネルが開かれることになっていますが、その中でも、最近、著書が三冊翻訳刊行された、スティーヴ・フラー氏を囲んで、"Thomas Kuhn, Knowledge Management, and The Intellectual: A Fuller STS?"というパネルが開かれることになっており、そちらにも登壇することになりました。フラー氏や登壇者の一人である、フランシス・レメディオス氏とは以前から面識があり、久しぶりの再開を楽しみにしています。その他にも昨年のアトランタでの社会科学の哲学円卓会議でお会いしたスティーヴン・ターナー氏も来日されるとのことなので、色々と議論できるのではないかと期待しているところです。

以上のことからお分かりになるかと思いますが、目下のところ4Sの準備に追われており、研究に励んでいます。

吉田敬

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