Blog / ブログ

 

時の彩り(つれづれ、草) 025

2008.02.27 小林康夫

☆ ナイシュタットさん登場(『Le gouvernement de soi et des autres』)

ブエノス・アイレス大学のフランシスコ・ナイシュタットさんが、われわれの招きで、パリから来日された。今日と明日にわたって講演をしてくださることになっている。

わたしがかれに会ったのは、2006年秋のUTCPのパリ・コロックのとき。CIPh(国際哲学コレージュ)のメンバーとして参加して発表をしてくださった。そして、本年1月のコロックのときも同じように発表をしてくださった。両方のコロックを組織した西山さんを中心に今回、お招きして議論を深めることにしたわけだが、すでにそれ以前にパリで、本年秋にアルゼンチンのバリローチェで行われる大規模の国際哲学シンポジウム(「メタ哲学」が主題らしい)に参加しないかというお誘いをいただき、同時に、ブエノス・アイレス大学でCIPhとの共同で「大学と理性」を問うセミナーも行おうという提案をいただいた。これこそわれわれが目標とする活動――人と人のあいだの継続的な相互関係を通じた共同研究作業――のモデルともなる事例である。わたしとしては積極的に取り組み、自身も行って参加しようと考えはじめている。

そういえば、本年のパリ・コロックにCIPhから参加してくださったもうひとりのイベコヴィッチさんからは、わたしにCIPhのcorrespondantになってほしいという依頼もあった。早速、簡単な履歴書を送ったが、実は、20数年前の国際哲学コレージュ発足のときに、わたしがcorrespondantになるという話があって、結局、ならなかったという経緯があったことを思い出して、なんだか昔の約束がいまになって戻ってきたみたいで不思議な気持ちだった。

ともかく、ブエノス・アイレス―パリ―東京を結ぶ哲学の回路が機能しはじめたことはまちがいない。

そのナイシュタットさん、われわれの土曜の「哲学と大学」シンポジウム後の懇親会に姿を見せてくれたのだが、わざわざわたしに、出版されたばかりのミシェル・フーコーの講義録(1982年-83年)「Le gouvernement de soi et des autres」をお土産にもってきてくださった。

MF__LeGouvernement.jpg

エレガントですねえ、この気配り!その裏表紙に本文の一部が抜粋されているのだが、そこには、哲学の現代のあり方として、「政治に対する外在性」、「幻想に対する批判」と並んで「禁欲としての哲学」、すなわち「みずからによる主体の構成」という言葉が読めて、確か東京都現代美術館のセミナーで川俣正さんに質問したとき、わたしが図らずも使った「禁欲」という言葉が何に対するエコーであるかがわかったような気がした。

Recent Entries


↑ページの先頭へ