UTCP叢書3『哲学と大学』刊行
短期教育プログラム「哲学と大学」はこれまで5回の研究会とシンポジウムおよびワークショップを実施し、当初の予定を終了しました。その成果が『UTCP叢書3 哲学と大学』(未來社、2009年)として来週刊行されます。巻末には、「哲学と大学」に関連するコメント付きの詳細な参考文献リストを付しました。
本論集は、近代の哲学的大学論を総覧する第一部と、人文学の制度的矛盾を考察する第二部からなります。大学における哲学教育を考えるうえでも、哲学者の大学論の系譜を辿る教科書としても最適です。またさらには、大学におけるさまざまな問い――学問の有用性と無用性、基礎と応用、人文科学と自然科学、教師と学生、哲学と哲学研究、といった諸関係を考えるための材料を提起する書でもあります。手に取っていただけると幸いです。(西山雄二)
いま、大学は〈可能〉なのか――大学存立の危機が叫ばれる今日的状況をまえに、気鋭の論者が人文科学の未来を探る。哲学・思想史に屹立する先哲の大学論を読みとき、現代の高等教育における歴史的・制度的矛盾をあぶりだす多元的論集。(帯紹介文より)
「大学において私たちは何を希望することを許されているのか――研究教育活動を信じることが許されるために、大学の名に値するいかなる場が、いかなる条件において、いかなる責任において残されるのだろうか。たとえ没落の歴史であるにせよ、「哲学と大学」をめぐって紡ぎ出された言葉を辿り直すことで、こうした信の力の所在を確かめることが本論集の目途である。」(「はじめに」より)
西山雄二編『UTCP叢書3 哲学と大学』(未來社、2009年、全290頁、2400円)
はじめに――大学において私たちは何を希望することを許されているのか
第1部
第1章 秘密への権利としての哲学と大学――カント『諸学部の争い』における大学論 宮﨑裕助
第2章 フンボルトにおける大学と教養 斉藤 渉
第3章 世俗化された日曜日の場所――ヘーゲルにおける「哲学」と「大学」 大河内泰樹
第4章 求道と啓蒙――ニーチェにおける哲学と大学 竹内綱史
第5章 比較と責任――マックス・ウェーバーの学問論 野口雅弘
第6章 ハイデガーの大学論 北川東子
第7章 「ユダヤ人国家」の普遍性を追求したヘブライ大学の哲学者たち 早尾貴紀
第8章 ジャック・デリダにおける哲学と大学 西山雄二
第2部
第9章 欧州高等教育再編と人文科学への影響 大場 淳
第10章 条件付きの大学――フランスにおける哲学と大学 藤田尚志
第11章 高学歴ワーキングプア――人文系大学院の未来 水月昭道
編者あとがき
「哲学と大学」に関する参考文献