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【報告】2022年3月12日着ぐるみ活動参加報告

2022.03.15 梶谷真司, 中里晋三

「全国こども福祉センターです。子どもの非行防止や居場所づくりを行っています。街頭募金にご協力よろしくお願いします」。
 2022年3月12日午後5時、名古屋駅太閤通口前広場に私たちの声が響く。思い思いの着ぐるみを身に着けた参加者が、精一杯の声で、通りゆく人々に声をかける。今日も着ぐるみ活動が始まった。

 全国こども福祉センターは、子どもへのアウトリーチを活動内容にしている。アウトリーチとは、支援が必要にもかかわらず、それを望まない、受けられない対象者に対し、支援(情報)を届ける手法のことである。
 活動の参加者は、ほとんどが10代から20代の若者である。
 今回、東京大学からは、梶谷と中里、岡田が参加した。梶谷は、ガチャピン、中里は、ポムポムプリン、岡田は、ピカチュウの着ぐるみを纏った。私にとって、着ぐるみを纏うのは、人生初の体験であったし、人前で着ぐるみを着ることには、気恥ずかしささえ感じた。しかし、着ぐるみを着た私は、着る前の私とは違っていた。気恥ずかしさなどどうでもよくなっていた。目の前にいる子どもに手が届くように。そんな祈るような気持ちで、声を張り上げていた。
 私が募金箱を持っていると、募金をしてくれる人や活動についての説明を求めてくる人と遭遇した。着ぐるみ活動に対する地域社会の関心の高さが窺えた。ホームレスの人も声をかけてきてくれた。様々な人が集まる。様々な人を寄せ付ける。それが、着ぐるみ活動だ。
 午後6時頃、私たちは、広場のベンチに座っている女子二人組に声をかけた。
 「こんばんは。どこから来たんですか。」
 「大阪からです。夜行バスで来ました。」
 それから、お互いのことを話した。全国こども福祉センターのチラシが挟まったポケットティッシュを彼女たちに渡した。
 「また会えることを楽しみにしてます。」
 私たちとの会話が終わると、彼女たちは、夜の街に消えていった。
 声掛けとは不思議なものである。私たちが声をかけるまでは暗かった彼女たちの表情が、私たちと話した後に少し明るくなっていた。
 午後7時頃、一組の男女のカップルが広場のベンチに座った。声をかけるべきか。カップルの貴重な時間に水を差してしまうのではないか。そんな考えが私の脳裏を過った。
 20分ほど経って、再びベンチの方に目を向けると、まだその二人はベンチに座っていた。よく見ると、こちらの方を見ているようである。勇気を振り絞って、声をかけてみた。
 少女の方は、以前に着ぐるみ活動に参加したことがあり、今日は彼氏を連れてきたのだと教えてくれた。互いに17歳で高校2年生であるという。
 私は、思い切って、彼氏の方に、「着ぐるみ着てみない?」と提案した。
 最初、彼は、少し照れた様子で、着ぐるみを着ることを躊躇っていたが、彼女の説得もあり、着ぐるみ活動に参加してくれることになった。彼はミニオンの着ぐるみを、彼女はデイジーダック(ドナルドダックの彼女)の着ぐるみを纏い、私と一緒に街頭募金を呼び掛けてくれた。
 そうこうしているうちに、気が付けば、すでに時計が午後8時を示していた。今日の街頭での活動は、終了である。
 事務所に戻って、着ぐるみ活動の参加者全員で、夕食を食べた。から揚げと白飯をいただいた。それをつまみながら、参加者同士で、話が弾んだ。
 この活動の参加者の中には、かつて、声をかけられる側だったが、今は、着ぐるみを着て声をかける側になったという人もいる。
 その中の一人に、私は聞いた。
 「なんで、着ぐるみ活動を続けているの?」
 「なんだろう。ここに来ると自分でいられる気がするからかな。」と19歳の少女は、答えてくれた。
 私もこの活動を継続したいと素直に思った。なぜなら、居心地が良いからである。この活動に除け者はいない。真のインクルージョンがここには存在する。
 居心地の良い居場所であり続けるために、支援する側と支援される側の関係が上下関係にならない工夫が施されていると、全国こども福祉センターを創立した、荒井和樹さんが教えてくれた。
 今回、ある女子高校生との対話が私に大きな気づきを与えてくれた。その女子高校生は、以前、非行に走ってしまったことがあるという。私は、何がその少女を非行に走らせたのか知りたかった。詳しく話を聞いていくと、学校、家庭、友人関係、SNSなど多くの原因が存在していた。先生に認めてもらいたい。親に褒めてもらいたい。友達に羨ましがられたい。SNSでバズりたい。そんな一種の競争心とその望みを叶えられないことに対する劣等感が、自分のありのままの姿の否定につながっていた。自己肯定感がもてない。それが彼女の悩みだった。だから、自己肯定感をもてるようにするため、非行の道を選んだという。
 日本の若者の自己肯定感の低さは、顕著である。自己肯定感の低さは、子どもから居場所を奪う。学校にも、家庭にも、どこにも居場所がない。そんな声を沢山聞いた。自己肯定感の低さは、深刻な社会病理なのだ。
 あなたはあなたのままで素晴らしい。そう言える大人が一人でもいれば、子どもの自己肯定感は上がる。そして、子どものありのままを認めることが出来れば、子どもの居場所は増える。
 あなたはあなたのままで素晴らしい。そう言える大人に私はなりたい。
(東京大学大学院法学政治学研究科 岡田悠也)

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