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UTCP新規プログラム「精神分析と欲望のエステティクス」

2010.03.24 原和之, └イベント, 数森寛子, 精神分析と欲望のエステティクス

2010年度から始まるUTCP中期教育プログラム「精神分析と欲望のエステティクス」のキックオフイベントが3月24日、東京大学駒場キャンパスにて開催されました。雨天にも関わらず多くの参加者が見守る中、事業推進担当者・原和之による本プログラムの趣旨説明、続いてウラジミール・サファトル (Vladimir Safatle) 氏による講演が行われました。

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 趣旨説明の中で、プログラムの立ち上げに際して配慮した点として挙げられたのは、(1)精神分析と、哲学をはじめとする他の人文科学との接点を確保すること、(2)臨床家との接点を確保すること さらに(3)精神分析およびそれに関連するテクストを読み込む場を作り出すことの三点で、これらを通して、精神分析に対してひろく存在する「興味」を具体的な学際「研究」へとつなげる方法を模索したい、という目標が示されました。

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ブラジル・サンパウロ大学哲学科のサファトル准教授は、
国際哲学精神分析学会(SIPP/ISPP)の創立メンバーで、精神分析と哲学、さらには精神分析と人文諸学との接点を模索する研究者です。「愛は死より冷たい——ヘーゲルの欲望理論における否定性・無限性・無規定性 « L’amour est plus froid que la mort : Négativité, infinitude et indetermination dans la théorie hégélienne du désir »」と題された今日の講演の中ではヘーゲルにおける死と欲望の概念、とりわけその哲学中での「死」の論理的な役割が、精神分析との関係から論じられました。
欠如としての欲望は無限性の顕現として理解されるべきであり、無限性とは無規定であることの力に他ならない。そして死と欲望とは無規定性への通路であり、その無規定性こそが主体性を形成する力となる。こうしたサファトル氏の指摘は、たとえば文学作品の分析にも発展させることができそうです。

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サファトル氏の発表を受け、会場からは次々と質問がなされました。表題に示されている「愛」はどう位置づけられるのか、臨床をはじめとする実践的諸学と哲学との関係はいかなるものか、社会的意識と主体の内面とのずれはどのように意味付けられるのか、死と愛とが未規定性を決定的な方法で規定しているのではないか等々、活発な議論が交わされ、話題は欲望の概念と自由の概念との結びつき、ヘーゲルの国家論における普遍性の役割へと発展しましたが、予定の時間を超過したため、続きは次回のセッションで議論することになりました。

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3月29日(月)には、
サルファトル氏による第二回講演会「非—人間的なものの政治的力——ラカンによるアンチゴネー読解と人間主義の精神分析的批判」
が予定されています。
皆様、是非ご来場ください。専門に関わらず、一人でも多くの方のご参加をお待ちしております。(報告 数森寛子)

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