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梶谷真司 邂逅の記録103 異物を取り込み、音楽を解放する!~現代音楽と共創哲学の出会い

2019.12.08 梶谷真司

今回ゲストとしてお招きした音楽家の小野龍一さんとは、8月に東京都美術館で行われたTURNフェスの後の懇親会で知り合った。そのとき、現代音楽について、日本の現状や彼の考え、活動についてお話を伺い、私が〈哲学×デザイン〉プロジェクトで目指していることと共通するものを感じ、今回の企画に至った。

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小野龍一さんは、東京芸大の作曲科で現代音楽の作曲と音楽史を学び、特にジョン・ケージの研究を行った。その後、現代音楽も含め、従来の音楽の枠組み、その硬直した閉鎖性に疑問をもち、音楽が生まれ、聴かれる場を作る活動をしてきた。
小野さんのHP https://ryuitarian.jimdofree.com/

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ワークショップで小野さんはまず音楽史を振り返り、西洋における楽譜が音楽を記録・保存し、再現してきたことが、音楽に決められた方とルールを与え、コントロールすることでもあったと指摘した。現代音楽は、そうした枠組みを壊し、支配から逃れる試みだという。この変化について、グレゴリオ聖歌、シェーンベルク、松平頼暁、武満徹、ピエール・ブーレーズらの音楽をYoutubeで再生しながら説明した。
小野さんの活動も、この流れの中にあって、音楽を既成の概念から解放/開放することを目指している。音楽がどのようなもので、どのように構成され、どのように演奏されなければならないかという規範=拘束から自らを解き放つとともに、音楽ならざるものを自らに取り込み、外部へと開いていくことである。
その集大成として、小野さんは「静かな家」という自分の作品を動画で紹介した。
https://www.youtube.com/watch?v=gH97AYP3wT8
これは一つの民家の中で音と光、言葉と共に家の空間全体を体験する場である。それは通常の意味での音楽でも演奏会でもなく、家を丸ごと使ったインスタレーションのようであった。

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小野さんの話が終わった後、参加者の人たちには、音楽について疑問に思うこと、自分の考え等、ホワイトボードに何でも自由に書いてもらった。すると非常に多種多様な意見、疑問が出てきた――現代音楽には「美」を感じない / 耳は音を排除できない / 感情に作用する / 年齢により音の聞こえ方が変わる / 音楽は空間を体験すること 音楽は対話なのでは? / 刹那のつながり / 記憶の鍵 / ノンバーバルなコミュニケーション / 音楽にジャンルがあるって型にはまってる感じがするけど誰が分けるの? / 日本伝統音楽≠日本人の音楽? / 音楽を学ぶこと=特定のジャンルの人になること? / 鼻歌は覚えるものか自然なのか / 再現芸術・コンセルヴァトワール以前以後、等々。
続けてお互いに向き合い、自分が書いたことについて全員に説明してもらい、現代音楽のみならず、音楽全般について自由に話し合った。東京芸大の学生や芸大出身の音楽家、音楽プロデューサー、雅楽師なども来ていて、これからの音楽のあり方についても話が及んだ。
最後は、作曲(?)のワークショップを行った――参加者に1枚紙を渡し、そこに縦に4本線を書いてもらい、そのいずれかのうえに〇を書く。4本線はリズム、○は音を鳴らすタイミングを表す(音符のようなもの)。
小野さんがリズムを取り、参加者は自分が書いた“楽譜”に従って音を鳴らす。音は何でもいい。拍手、机をたたく音、自分の声、足踏みの音、それぞれが思い思いの音を出して“演奏”する。最初はバラバラだったのが、続けているうちに、だんだん音が合ってきてリズムを刻み、“一つの”音楽になる。

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思った通りだ。音楽を通していろんな人が、音楽が好きな人も苦手な人も、楽器が弾ける人も弾けない人も、年齢も性別も関係なく、一緒にいられる場が開かれた。
ここにもまた共創、インクルージョンの形がある。

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