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【報告】アジア・ドゥルーズ/ガタリ研究国際会議第七回2019年東京大会

2019.10.25 梶谷真司, 山田理絵, 國分功一郎, 佐藤麻貴

2019年6月21日から23日の三日間、東京大学駒場キャンパスにて、アジア・ドゥルーズ/ガタリ研究国際会議第七回2019年東京大会(Deleuze/Guattari Studies in Asia Conference 2019 Tokyo)が開催された。本会議は2013年の台湾・台北大会を第一回として始まったものであり、その後、インド・マニパル、日本・大阪、韓国・ソウル、シンガポール、フィリピン・ナガと順調に回を重ねてきたものである。開催の母体は、エジンバラ大学出版(Edinburg University Press)が出版している学術誌「ドゥルーズ/ガタリ研究」(Deleuze and Guattari Studies: https://www.euppublishing.com/loi/dlgs)である。

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 近年、参加者は緩やかな減少傾向にあったが、本大会は、通常応募者81名、海外からの招聘研究者6名、開催委員会とスタッフを併せると総勢で100名以上が関わる大規模なものとなった。これだけの規模の学術イベントが何の支障もなく開催できたのは、UTCP(東京大学共生のための哲学センター)、HMC(東京大学ヒューマティーズセンター)、IHS(東京大学 多文化共生・統合人間学プログラム)、およびスタッフの協力のおかげである。この場を借りて心からお礼申し上げたい。

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 大会のテーマは「戦争機械、対立、共生」(War Machine, Conflict, Coexistence)であった。「戦争機械」とはドゥルーズとガタリが国家に回収されない集団的な力を名指すために作った概念である。現在の世界では、テロや国際資本といった「戦争機械」と名指すべき諸力が、当たり前のように活動し、様々な対立を生み出している。かつて新奇であったこの概念はもはや新奇ではなくなっている。そんな世界の中でどう共生を考えるかがこのカンファレンスの大きなテーマであった。

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 参加者の発表テーマは多岐に及んだが、注目すべきテーマとして「東アジアにおけるドゥルーズ哲学の受容」を扱ったパネルが非常に活発な議論を引き起こしたことを紹介しておきたい。実際に話題になったのは、韓国と日本におけるドゥルーズ哲学の受容の違いである。韓国では日本よりやや遅れて80年代にドゥルーズを初めとする現代フランス思想が受け入れられていったが、当時の韓国は軍事政権後の民主化の過程にあり、ドゥルーズ哲学も専ら民主化あるいは民主主義との関連で読まれたという。この哲学を、主に精神分析の文脈で読み解くところから受容していった日本とのこの違いは大変興味深いものであり、今後も更なる研究の深化が望まれる。
 来年、2020年のアジア・ドゥルーズ/ガタリ研究国際会議第八回大会は中国・南京で開催される。この会議が国際的な研究者の交流と、研究成果の共有の場であり続けることを主催者として強く期待する。

文責:國分功一郎(大会総監督)
写真:篠田英美

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