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【報告】中山大学「西学東漸」研究プロジェクトおよび儒学思想シンポジウム

2016.12.09 石井剛

11月23日から26日まで、中国・広州の中山大学を訪れた。東京ではわたしが出かけた次の日に時ならぬ初雪で町が白く染まったそうだが、寒波は亜熱帯の広州にも訪れ、冷たい北風にあおられながらコートを羽織る肌寒さだった。

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訪問の目的は哲学系で行われる二つのイベントに参加すること。ひとつは彼らの進める「西学東漸」研究プロジェクトの一環として、中国哲学と西洋との出会いに関する講演を行うこと。わたしの博論をベースにして出版した『戴震と中国近代哲学』で論じたのは、まさに西学から始まる哲学の問題だったので、講演はたのしく行われた。もうひとつは、日中韓三国における儒学思想の今日的意義をめぐるシンポジウム。昨年訪問した際にこの話を持ちかけられ、韓国のカウンターパートが延世大学の白永瑞さんであることを聞かされ、南国で思いがけず共同企画が実現したというもの。UTCPからはわたしの他に林少陽さんが参加し、「文」概念の現代的解釈をめぐって、これまたたのしいディスカッションができた。

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中山大学は北京や上海の大学と比べると日本ではなじみが薄いかも知れない。しかし、70名を超える巨大なファカルティであるというだけではない、ユニークさをここの哲学系は具えている。今回のシンポジウムを実現させた陳少明さんの存在もさることながら、『開放時代』を支え続けている呉重慶さん、現象学の倪梁康さん、日本哲学の廖欽彬さんなど、研究者の個性が際立っているのがわたしには魅力的に映じる。

折しもUNESCOでは世界哲学デーのイベントが華々しく行われたばかりだったが、中山大学ではそれにあわせて11月を哲学月間と定めて、博論審査を集中させるほか、国内外から次々と哲学者を招いていた。わたしたちのイベントもそのなかで行われたというわけだ。

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ほんの数日であったが、滞在中には多くの方から本などもいただき、宿題も抱えて帰ってきた。ひと言でいえば、日本から声が聞こえてくることに対する彼らの期待がたいへん大きいということだろうか。それにどうやって応えていけばいいのかと考え始めると途方に暮れるが、できるかどうかはともかく、やるべきことは決まっている。学びて時にこれを習い、遠方より来たる朋を楽しむこと。きっとそれだけだ。

文責:石井剛(UTCP)

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