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【報告】駒場祭での哲学対話イベント「こまば哲学カフェ」(1)

2015.03.03 梶谷真司, 稲原美苗, 小村優太, 川辺洋平, 松山侑生, 土屋陽介, 佐藤麻貴, 宮田舞, 神戸和佳子, 崎濱紗奈, 安部高太朗, Philosophy for Everyone

2014年11月22日〜24日の3日間にわたり、東京大学駒場キャンパスでは「駒場祭」(東京大学駒場キャンパスの学園祭)が開催された。この期間中、P4E研究会は昨年に引き続き、「こまば哲学カフェ」を出店した。

これから数回にわたり、このイベントの様子を、各日の企画者よりご報告いただく。初回は、P4E研究会の代表で、1日目の第4セッション「さらば我が愛!〜終わってしまう愛をめぐる哲学対話〜」の企画をされた梶谷真司先生による、駒場祭全体に関する報告である。

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第2回こまば哲学カフェ&「終わる愛」をめぐる対話

11月22日(土)から24日(月)まで、昨年に引き続き、駒場祭で哲学カフェを開催した。2回目となる今年も、研究会のメンバーにいろんな企画を立ててもらった。昨年よりさらにパワーアップした企画が目白押し。

初日は、朝の哲学対話から始まって、「環境をめぐる哲学対話」。午後は「コスプレだらけの対話大会」と「さらばわが愛!終わってしまう愛をめぐる哲学対話」。2日目の日曜日は朝の哲学対話のあと、「沖縄」をめぐる哲学対話、午後は「SFと性:男×女×??」と「頭がいいってどういうこと?」、最終日の月曜日は、朝の哲学対話に続いて、「しかく・さんかく・まる」、午後に「落語×哲学カフェ」となった。

昨年は、初日から9時の開店と同時に人が入ってきて、それから3日間、客が途切れることがなく、延べ人数にして200人を超えていた。その時はこれといった宣伝もしていなかったこと、またこの一年で哲学対話の認知度は上がりこそすれ下がってはいないことを考えると、今年の心配はむしろ、お客さんが来すぎるのではないかということだった。始まってみると、案の定、開店と同時に人が入ってきて、すぐに朝の対話に突入。各セッションも、人数の多少はあったが、つねにいろんな人たちが参加してくれた。全体としては、参加者数も昨年と同じかやや多いくらいだっただろう。とくに大入りだったのは、2日目の「頭がいいってどういうこと?」で、中学生から年配の人まで、幅広い世代の人が来ていた。席が足りなくて立ち見が出ていたこともあり、入れ代わり立ち代わりで60人くらいが来たのではないかと思う。また昨年は、ドアのところで中を覗いている人を外にいるスタッフが「どうぞ」と勧めてから入ってきた人が多かったのに対して、今年は初めから迷わず、目指して入ってくる人がかなりいた。

さて、他のセッションの報告はそれぞれの担当者に任せるとして、ここではわたし自身が企画した「終わってしまう愛をめぐる対話」について報告しておこう。参加者は40人より少し多いくらい。まずは質問ゲーム。5人ずつでグループを作り、「好みのタイプは?」という質問に対して、一人が答え、あとの4人がひたすら質問をする。たとえば、「やさしい人」と答えたら、「やさしい人ってどういう人ですか?」と聞く。それに対して「人のことを思いやることができる人」と答えたら、「例えば、どういうときにどんなことをすると思いやりがあると言えるのですか?」と聞く、といった具合である。そして3分経ったら、交代して次の人が質問に答える役になり、これを順次全員がやっていく。このゲームはたんなるアイスブレイクではなく、質問をすることと、それに答えること、自分の意見を述べ、さらにその理由や具体例をきちんと考え、言葉にするとてもいい練習になる。哲学対話のためにうってつけの「ウォーミングアップ」である。そのうえゲームっぽいので、しばしば笑いが起き、やっていて単純に楽しい。あらかじめこれをしておくと、そのあと本格的に意見を出したり対話をするのが、非常にスムーズになる。

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続いて今回のテーマに合わせて「愛が終わるのはどんなときか」という問いを私のほうからみんなに投げかけた。ただしここでは、かならずしも相手が人間でなくてもいいことにした。物でもいいし、動物でもいい。すると、実に様々な意見が出てくる――「無関心になった」とか「幻滅した」とか、「飽きた」「あきらめた」「違和感が許せなくなった」といった感情的な変化を挙げた人もいれば、「得るものがなくなった」「与えるものがなくなった」「自分の価値が下がったように感じた」「思い浮かばなくなった」「分かってしまった」(笑)というような、感情とは違った意味での気持ちの変化を挙げた人もいた。また「体力が続かない」とか「話し合いができない」とか、「攻撃された(のに痛いと思わなくなった)」「(時間や気持ちや体を)奪ってくれなくなった」とか、状況の変化に関係する意見も出た。年配の人からは「自分が死ぬとき」という発言も出た。こうしたいろんな視点からの意見が出るのが、哲学対話の醍醐味である。

こうやって「愛が終わるとき」について考えた後、みんなから疑問を出してもらった。すると、「愛し続けるにはどうしたらいいか」「終わった愛は取り戻せるか」「愛は終わるのか冷めるのかなくなるのか」「愛の終わり方はどのように分類できるか」「愛する者に何を求めるか」などなど、様々な問いが出た。そしてそれらを組み合わせてより一般的な問いを出してもらったところ、「愛に終わり方はどのようなものか」「愛のために何ができるか」「愛の条件は何か」「愛することと愛されることはどちらが価値があるか」という4つになった。その後は、4つのグループに分かれてそれぞれで問いを選んで対話をしてもらった。

個人的には「愛が終わる」ということをテーマに、けっこう危うい対話になることを期待していたのだが、最終的には普通の愛についての対話になってしまった。別の進行の仕方をすればよかったといささか反省。とはいえ、感想を見る限り、ほとんどの人たちが楽しんでくれたようだし、この後の合コン(懇親会)への参加率も昨年より高く6割を超えていたので、これでよしとしよう。

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今年は学部生が企画したセッションがあったせいか、若い人、学生や高校生が増えた。また、今年設立されたNPOアーダコーダの川辺洋平さんとコラボできたのも、新たな展開である。来年に向けてさらに進化する予感がある。

(梶谷真司)

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