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時の彩り(ラスト・ラン) 163

2014.06.24 小林康夫

★先週もまたいろいろなことがあったけど、関係する財団の仕事が多かったかな。日本証券奨学財団の評議員会と奨学生選考委員会。それに三宅一生デザイン文化財団の会議があって、三宅一生さんにお会いできたのが、わたしには喜び。イッセイさんは、こう言ってよければ、同時代の日本人でただひとり、わたしが「追っかけ」をした人。若いときからの敬愛は変わらない。『大学は緑の眼をもつ』(未來社、1997年)に少し書いてあるけれど、わたしが駒場で行ったたくさんの多様なイベントのなかでも、もっとも忘れ難いもの(のひとつ)は、まちがいなく、1994年6月8日、いまでは学際交流ホールという名前になっているアドミニ棟のホールで、イッセイさんの講演会、いや、同時にファッション・ショーを行ったこと。国立大学が払えるのはほんのわずかな講演料でしかないのに、イッセイさんは、実際に自分のつくった服を見てもらうのがいちばんと、プロのモデルさん2名に、メークなどのスタッフ数人も引き連れてきてくださった。留学生も含めて、表象文化論の大学院の学生数名もにわかモデルとなって壇上にのる。大学という場が一瞬にして、創造の場に変貌した。あのときの感動はいまでも鮮やかに思い出す。あれからちょうど20年か。その間もイッセイさんは次々とまったく新しいプロダクトを生みだし続けている。その大胆にして若々しい創造への意志の持続、それこそがわたしを感動させる。見習わなければ・・・安易なルーティンの轍のなかで自分を繰り返すのではなく、少しでも自分を更新しなければ・・・そして、なにかを生み出さなければ・・・。


★でも、ほんとうになにかを生み出すのは、難しい。なにしろ、20年前のちょうどその頃に、最初の構想を得た表象文化論の「教科書」、途中で構想が大きく変わったり、いろいろ他の事情があったとはいえ、20年経ってまだ結着がついていない。それが前回のブログで触れた美術論の論考。先週取り組んでいたセザンヌのところはなんとか書きあげたけど、そうなると記述は20世紀に突入するわけで、この最後のパートをどうまとめるか、スケッチを描いたり消したり、しかし書きはじめてみないことにはわからないんですけどね。


★そして土曜はIHSの授業。今回は石浦章一先生がゲスト。遺伝子と脳という二つのもっとも先端的な問題領域を、それぞれわかりやすい、おもしろいトピックをもとに講義してくれました。しかも、中間楽章には、ツタンカーメンの「謎」に迫るという推理小説仕立ての仕掛けも。最後には、ご自分の研究の一端も披露。理系の知もほんとうにおもしろい。線的な決定性と本質的な未決定性と、ここでも、ふたつの異なった視点をもつ必要が見えてきます。

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★今週は、明日25日水曜には、1日がかりで、日仏国際シンポジウムです。テーマはシャーマニズムというか、人間の個の限界を超える経験。午後に、パリから、アーティストであり秘術家でもあるマリオン・ラヴァル=ジャンテさん(パリ第1大学)、京都から、鎌田東二さん(京都大学)、そしてダンサー/コレオグラファーの山田せつ子さんに来ていただいて、それぞれのパーソナルな経験をうかがうことになっています。どこまで通訳できるか、プロの通訳は頼んでいないのでわかりませんが、興味がおありの方はどうぞ。(イベント欄をご参照ください)。

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