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時の彩り(ラスト・ラン) 158

2014.05.19 小林康夫

★先週の月曜は大澤真幸さんとの3回目の対談、一応、今回で終わりで、うまく行けば、9月には本となって出版されます。(だが、自分の単著の本の執筆は遅れているぞ、がんばらなくては!)


★翌13日(火)は、UTCP主催で、駒場博物館の展覧会の関連企画で、学習院大学の進藤久乃さん、東京外国語大学の松浦寿夫さんをゲストに招いて、桑田光平さんの司会でシンポジウム「ジャコメッティのパリをめぐって」。これも多くのお客さんが来てくれました。進藤さんのシュール時代のオブジェについての発表、それを受けて、松浦さんのロザリンド・クラウスの議論を梃子にそれをひっくり返しつつ、ジャコメッティの「空虚」に迫るトーク。その後が、わたしでしたが、前週の金曜特別講座に続いてなので、ほんとうに事前準備はなく、ただ《終わりなきパリ》そのものについて、その場で浮かび上がる思いを語ろうと、いつも以上にフリー・ジャズ的展開。そうしたら、思いがけずあのリトのシリーズの最後に、ヌードが浮かびあがることの意味へと話しが絞られていったのが、われながらおもしろかった。「そこではじめてジャコメッティは画家になったのだ」などという大胆不敵な言葉が口をついて出てきたりした。ともかく、かれの絵画彫刻を支配していた眼差しの「地獄」から、空間に拡散していく「解放」の眼差しへというアクロバティックなトポスをつかみとったのは収穫でありました。おつきあいいただいたみなさまに感謝ですね。終った後もゲストの方々と楽しく会食いたしました。(なお、やはりリトグラフとはどういうものなのか、ということをちゃんと知ることが必要と思い、6月14日には、画家でリト作家の阿部浩さんをお招きしてお話をうかがうことにしました。またご案内いたします)。

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★この週は、五月祭のために金曜午後が休講になり、わたしもちょっと負担減だったのですが、いや人生はそうは甘くない、土曜には、IHS(リーディング大学院)の授業が入っていました。今回は、金子邦彦さんに来ていただいて、複雑系の科学の講義をしてもらいました。金子さんが書いた名著『生命とはなにか』がテクストです。あいかわらずおもしろい。時の話題でもあるSTAP細胞にも触れてもらい、スリリングな展開。わたしのほうは、自分なりの時間論の哲学をそこから汲み上げようとしてみたり、いつも通り勝手な反応ですが、対話をすることが楽しい。自然系の研究者と人文系の研究者とが学生の前で対話をすることこそが、駒場という場のありようではないか、というわたしの長年の信念が実った午後の時間はほんとうに貴重でした。こういう出来事に、知性が揺らぎ、振るえ、輝くことが、「教養」というものの本質なんですがね。「専門」知識のなかに閉じこもっているだけではなくてね。(でも、「駒場」はどこに行くんだろう・・・?)

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★その金曜午後が休講になった時間に、これもIHSの後期の授業のための打ち合わせでもあるのですが、ダンサー/コレオグラファーの山田せつ子さん、木野彩子さんに来ていただいて、身体の哲学についてミーティングをしました。そうしたら、翌日になって、頭のなかにいろいろプランが浮かんできたのですが、これについてはいずれまた。ともかく、初級フランス語を教える駒場の学生には全員、4月に「Je danse, donc je suis」を暗誦させているわたし。そのようにあれかし!

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★なお、今週は、21日の水曜に、フランスの劇作家であり詩人であるヴァレール・ノヴァリナさんを招いた対話の会があります。いや、すごい人ですよ。フランス語がわかる人ならば、ぜひこの人の「言葉」に触れてもらいたいと思いますね。わたしも行って、対話を試みるつもりです。(イベント欄を参照してください)。

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