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【報告】2013年度 高校生のための冬合宿・IPO選考会

2014.04.05 梶谷真司, 清水将吾, 星野太, Philosophy for Everyone

2014年1月18日から19日にかけて、アルカディア市ヶ谷(私学会館)にて、「日本倫理・哲学グランプリ」(国際哲学オリンピックの日本代表選考を兼ねるエッセイコンテスト)で入賞した高校生たちのための哲学エッセイ指導ならびに国際哲学オンピック(以下IPO)の日本代表を決める選考会が、上廣倫理財団の主催で行われた。講師および選考員は北垣宗治氏(国際哲学オリンピック日本組織委員長)、林貴啓氏(国際哲学オリンピック日本組織委員)、梶谷真司氏(UTCP)、星野太氏(UTCP)であった。18日のエッセイ指導は本学の研究員と大学院生がチューターとなって行われた。

18日の開会に際し、北垣氏から昨年の入賞エッセイについて解説があり、IPOではまだ達成されていない日本人の入賞が期待されると、高校生たちに向けて激励の言葉が贈られた。続いて林氏から、IPOの評価基準の紹介があったうえで、エッセイ作成のうえで心がけるべき点ついてお話があった。梶谷氏は、IPOの評価基準を念頭に置いた今回のエッセイ指導の趣旨についてお話をされた。

IPO_2014winter_1.JPG

1日目のエッセイ指導の題材となる課題文は、トマス・アクィナス『神学大全』からの引用で、現実の世界に見られる善悪をめぐる文章だった。高校生たちはこの課題文に基づいたエッセイのストラクチャーを(日本語で)作ることで、エッセイ作成の練習をした。梶谷氏が説明されたように、エッセイ作成において肝要なのは、すぐに書き始めるかわりに、問いから結論へと至る全体のストラクチャーを作ってから書き始めることである。チューターの役割は、時間配分について注意を促すことと、高校生に質問を投げかけて考えさせることで、ストラクチャー作りを手助けすることであった。私も2人の高校生のエッセイ作成を見た。最初にできるだけ多くの問いや論点を書き出す段階で、非常によいアイデアが多く出されるのに驚いた。そうなると難しいのは、それらをまとめあげながら、不要なものを捨てていく作業である。私が見た2人の高校生は、限られた時間の中でとてもよくやっていた。この時間の最後には、高校生たちによるストラクチャーのプレゼンテーションが行われた。

IPO_2014winter_2.JPG

1日目の夜は、高校生たちが「日本倫理・哲学グランプリ」で受賞をしたエッセイをもとにディスカッションをした。「日本倫理・哲学グランプリ」では、高校生は3つのテーマから1つを選んでエッセイを書いたので、ディスカッションは3つのグループに分かれて行われた。私は川瀬和也氏と一緒に、「科学にとって哲学は必要か」というテーマでエッセイを書いた3人の高校生のグループに入った。それぞれの高校生が自分のエッセイを紹介するのを聞いてみると、3人とも、「科学にとって哲学は必要だ」という結論でエッセイを書いたようだった。しかしその根拠は様々で、「哲学は根源に戻るものだから、科学を学問として完成させるために必要」という論点や、「哲学は『なぜ』ということを問うものだから、科学の本来の目的を考えるうえで必要」という論点、また、「科学のみでは倫理的・美的な判断ができないため、哲学が必要」という論点も出てきた。その後は出生前診断やクローンの問題などが話題になったが、そこで川瀬氏が指摘されたように、「科学にとって必要か」という問題と「科学を使う私たちにとって必要か」という問題を分けて考えることが重要であるように思われた。

2日目は選考会の本番であった。本番では高校生たちは、4つの課題文から1つを選び、英語でエッセイを書く。開始前に神戸和佳子氏から、P4E研究会作成の「英文エッセイの表現集」が配布され、それについて説明があった。いよいよ選考会が始まると、チューターたちは会場から退出しなければならない。前日にチューターとして伝えた以上のものを、高校生の柔軟な知性は獲得したはずである。そう信じながら会場の部屋を出た。

昨年7月に行われた「高校生のための哲学サマーキャンプ」のときもそうであったが、今回の指導でも、私自身学ぶところが非常に多かった。このような機会をお与えくださった上廣倫理財団の皆様に、心よりお礼申し上げたい。

(報告:清水将吾)

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