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【報告】P4C in Hawaii 見学(5)

2013.04.07 神戸和佳子, 崎濱紗奈, 榊原健太郎, Philosophy for Everyone

P4C in Hawaii 見学、5日目は、アイエア中学校を訪問しました。

【3月7日 アイエア中学校】
ハワイ滞在5日目、一行はBenさんの運転するいつもの車に乗ってホノルルのアイエア地区にあるアイエア中学校へ向かった。アイエア地区は、アロハスタジアムやパールハーバーのある地域である。アイエア中学校は、日本の福島市の公立中学校と国際交流を行っており、1年交替でホームステイの受け入れをしているとのことだった。
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<エントランス>
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<校庭>

アイエア中学校では、学校内で一人の女性の先生だけが、自分のクラスでP4Cを行っている。彼女はP4C実践のベテランであるとのことであった。一人だけによる実践とはいえ、学校内で彼女のP4C実践が傍観されていることはなく、むしろ他の先生たちは彼女へ敬意をもっており、彼女のP4C実践への関心を抱いているとのことであった(これは、後のランチの時間に、彼女と同じ学年で別のクラス担任を受け持っている先生が聞かせてくれた話である)。
さて、教室入口の“mindful”なドア(下、写真)を開くと、そこは中学2年生のP4Cのクラスだった。
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<2階から校庭と周囲を望む>
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<教室入口のドア>

授業はまず自己紹介から始まった。女性の先生は、こう切り出した。「Hi みなさん、お名前をおしえてください。えーっとそれから、“あ、コレって自分と同じだな!”と思う、映画や小説やテレビのキャラクターは何か、どうぞ話してください。」。うーん、自己紹介を促す振り(フリ)としては、実に興味深い! 生徒たちから挙がったキャラクターはテレビ番組のキャラクターが多かった。答えない生徒もいた。また、深く考え込んだものの、結局、「うーん、パス」という生徒もいた(P4Cでは、もちろんこれらもOK ! )。私たちも、「映画『The Sound of Music(サウンド・オブ・ミュージック)』の~~」、「映画『Spirited Away(千と千尋の神隠し)』の~~」、、、などと自己紹介しながらコミュニティボールを回した。
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<「今日のテーマ(問い)を決めよう!!」>

続いて今日のP4Cスタイルの授業で話し合うテーマ(問い)についての投票だ。「テスト(HSA)」についての10コほどの問い(これは前回の授業で課されたものだろう)が、ホワイトボードに生徒たちによって書き込まれた。そして投票。投票の結果、「Is it that important to take these tests every year ? (こうしたテスト(HSA)を毎年やるのはそんなに大事か(どんな意味がある?)」に決まった。
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<投票結果>

「一応大事だ、確認の意味がある」「というか、テストがあるから勉強するんだから、その意味では重要じゃない??」。「でも、やっぱりテストって、あんまりいい気がしない」といった賛否両論が、生徒たちからぽつぽつと出てくる。しかしコミュニティからの意見が出にくくなったととき(おそらく多くの参加者そう感じたとき)、この授業に一緒に参加していたJackson先生から「もっと違う評価の仕方があるんじゃないか。現在このテスト(HSA)が行われている理由は、テスト(HSA)によらない仕方を新しく作り出すにはコストがかかるのがネックであるし、評価の仕方も難しく大変、だから先生とか政府とかがきっとやりたくない、ってことだろうね。でもね、本当にこのままでいいんだろうか。」と、いわば停滞を打ち破るような発言が示された。生徒たちの多くはおおむね同意しつつ、新たに考えを深めていく様子だ。Jackson先生は加えてこう発言した。「マークシート試験のように“答えが一つ”しかない問題って、なんてくだらないんだ。「人生」の問題とはあまり関係がないような気がしてないかい、みんな」、と。生徒たちからは「イエス!」「そうだ!」などと共感の反応、同意の頷きなどが見られた。このタイミングで授業は終了時間を迎え、次回までに「今日のP4Cの話し合いの中からあなたが興味をもった表現を選び、それについてレポートしよう」という課題が示された。
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<授業の様子>

上述したJackson先生の一連の発言が、コミュニティの議論を一歩進め、生徒各自の探究(inquiry)の質を深めるための(コミュニティの一員としての)積極的な関与の提示であることは明らかであった。Jackson先生の発言に続いた(生徒たちによる)リアクションの強度や幅もそのことをはっきりと物語っていた。おそらくは授業後も、Jackson先生の一連の発言と自分のアイデアとの関連を探りながら、生徒たちは次回までの課題に取り組む時間を過ごしたはずなのだ。ここに、熟達したP4C実践者があわせもつ、いわば“アーティスティック”な側面を垣間見た気がした。一方、担任の先生のファシリテーションも随所で洗練されていた。一例を挙げれば、授業内における動作の節目ごと(例えば、投票行動の終了時刻、thinkingタイムの始まりと終わり、議論の終了、授業終了時刻など)に、音の出るタイマーを活用しながら時間管理をしていたことだ。機械独特の乾いた音で“ピピピっ”っと鳴るアラームに調子を合わせては、「はい、(アラームが)鳴ったね、じゃ議論はここまでね」などと、非常に軽妙にP4Cを回していた。この点について、一緒に参加していた、(P4C-Hawaiiファミリーの一員でもある)兵庫県立大学の豊田さんに確認すると、「そうですね、ある種のゲーム性をうまく取り入れているってことですよね」とお答えくださった。そう、“ゲーム感覚”(の楽しさ)にも似た、ドキドキ・ワクワク感さえ演出できるポテンシャルを備えていることが、“P4Cスタイル”の魅力的な一面なのだ。
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<教室内の風景>

【大学編:Jackson先生のゼミ@ハワイ大学マノア校3/4,3/6】
P4C in Hawaii 見学中、ハワイ大学マノア校哲学科のJackson先生のゼミにも参加させて頂いた。授業はもちろんP4C-Hawaiiスタイルだ。参加者は20名前後。一つの映像素材を視聴して、それをもとにP4Cスタイルでゼミを行った。映像素材の内容は、「3.11」を被災地で経験した福島の高校生の話(録画)、そしてその話(録画)を視聴した大阪の高校生の談話である。ゼミでは、この映像素材をもとに、ゼミで話し合いたいテーマ(問い)とその理由を全員で提示し合うという内容であった。ゼミ参加者は各自、自分自身のテーマ(問い)を用意する。そして、ゼミ室のフロアに敷いた長さ4メートル程度、幅1メートル程度の大きなペーパーに、マジックペンで自らの問いを書き入れる。そして投票。投票の結果、選ばれたテーマは「普通の生活は、何から構成されているのか?」というものだった。翌週(次回)以降、本格的なP4Cスタイルの議論に入るという段階で終了。授業の様子を写真(下)でお伝えしたい。
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<「問い」を書きこむゼミ参加者>
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<参加者の「問い」が書きこまれたペーパー>

―続く―

(榊原健太郎)

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