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【報告】東京大学−ハワイ大学夏季比較思想セミナー(3)

2012.09.02 梶谷真司, 中島隆博, 文景楠, 高山花子, 神戸和佳子, 崎濱紗奈, 芮雪, 川瀬和也, 田村未希, 東西哲学の対話的実践

学生による「東京大学―ハワイ大学夏季比較哲学セミナー」のご報告も三回目に入りました。今回は、研究協力者の崎濱が執筆担当させて頂きます。

セミナー始まって5日目ということで、幾分リラックスして授業を受けられるようになってきた。とはいえ、哲学的議論を英語で行うということの難しさは変わらない。3日(金)の授業内容は、心身問題(梶谷先生)や性善(エイムズ先生)に関するもので、内容自体もハードであった。積極的に発言するアメリカの学生に気押されながらも、何とかして議論に加わらねばと必死に聞き耳を立てる。誰かが発言し終わるやいなや(というよりは発言の途中でも)次々に手が挙がるので、少しでも何か気にかかることが心に浮かべば即座に手を挙げなければならない。ところが、これがなかなか難しいのである。せっかく東京から参加しているのだから何か気の利いたコメントをしなくては、という思いが余計なプレッシャーとなる。けれども私は哲学を専門に勉強しているわけではないので、気の利いたコメントなど、まず出来ないに決まっている。そう思うと、ますます手が挙がらなくなってしまう。結局、一週目はこの悪循環からうまく抜け出ることができず、もやもやとした思いのまま最初の週末を迎えた。

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<リンカーン・ホールの部屋からの眺め。コリアン・スタディーズの建物が見える>

そんな私の弱気な心にぐさりと刺さったのが、翌週6日(月)の朝、梶谷先生がおっしゃった一言だった。「一週目、日本からの参加者の態度は、はっきり言って良くなかったです。もっと気軽に手を挙げるところから始めましょう。」先生から指摘される前に自らの態度を改めることが出来ていればそれが理想だったけれど、お叱りを受けた以上はなおのこと、積極性をアピールしていかなければならない。気の利いたコメントをしようなどという思いは捨てて(そんな思いは最初から持たなければ良かった)、取りあえず手を挙げてみることにした。

本日の授業は孟子の「忍びざる心」(中島先生)と独立自全たる純粋経験(石田先生)について。中島先生の授業の特徴は、毎回、哲学的議論と現実世界の問題との接続点を示してくださることだ。そのため、哲学を専門としない私も幾分発言がしやすくなる。一方、西田幾多郎の純粋経験の話は形而上学的色合いが強く、大変難しい。仕方がないから、本当に幼稚だけれど「○○がよくわかりません」という程度の質問から始めてみた。こんな質問をして申し訳ない、という気持ちでいっぱいだったけれど、石田先生や周りの学生が、私の幼稚な質問をうまく議論の中に拾ってくださった。ありがたいという気持ちでいっぱいになる反面、もう少し哲学(そして英語)を勉強して、議論を深めることにもっと貢献できるようになりたい、との思いを強くした。

【番外編:週末の様子】
私は沖縄研究を自らのフィールドとしているのだが、「沖縄」と「ハワイ」はしばしば比較して語られることが多いため、「ハワイ」とは一体どのようなところなのか、と前々から関心を持っていた。そこで土地の文化についての見識を広めるべく、最初の週末を利用して訪れたのが、「イオラニ宮殿」、「ビショップ・ミュージアム」、「プウ・オ・マフカ・ヘイアウ」の三カ所だった(二度目の週末では「クカニロコ」を訪れる機会も得た)。ここでは写真とともにちょっとしたコメント・感想を御紹介したい。

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<イオラニ宮殿>

19世紀末、カラカウア王の命で建てられた宮殿。こじんまりとした建物であるが、カメハメハ王やリリ・ウオカラニ女王などの肖像画も飾られており、ハワイ王朝の往時が偲ばれる。

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<プウ・オ・マフカ・ヘイアウ>

「プウ・オ・マフカ・ヘイアウ」とは土地の言葉で「逃避の丘」を意味し、ハワイの四大神が集まる場所とされている。もともといくつかの建造物があったそうだが、今は石垣のみが遺っている。ヘイアウからは北海岸の海が一望できる。

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<クカニロコ>

「クカニロコ」オアフ島のほぼ中心、「へその緒」に位置する聖地。聖なる岩が点在している。ここは王族など高貴な血族だけが出産を行った場所だそうだ。

 今回の三週間は、比較哲学だけでなく、ハワイ・沖縄比較地域研究までもすることができたという意味で、私にとって本当に有意義な時間となった。このような機会をくださった方々(上廣倫理財団の方々や、私をメンバーに選んでくださった先生方)に深謝したい。それから、私の個人的な興味だったにも関わらず、灼熱の日差しのもと過酷なデイ・トリップについてきてくださった皆様、本当にありがとうございます。

(報告:崎濱紗奈)

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