Blog / ブログ

 

【報告】UTCPワークショップ「中国は現代哲学をどのように読んだか?―東西の出会いと対決」

2011.07.22 中澤栄輔, 王前, セミナー・講演会

2011年4月にUTCPの共同研究員である王前さんが著書『中国が読んだ現代思想―サルトルからデリダ、シュミット、ロールズまで』(講談社、講談社選書メチエ)を刊行しました。それをうけて2011年7月14日に、本の合評会をおこないました。

110714_Wang_01.jpg

『中国が読んだ現代思想』は現代中国にどのように西洋の哲学・思想が導入されたのか、ということを論じたものです。とても広い範囲を覆っていて、シュミット、ロールズ、丸山眞男……と、西洋と中国と日本、この3つの地域を俯瞰し、言語を横断しながら現代の思想の地図を描いています。中国古来の伝統的思想と、戦後のマルキシズム、それに現代思想がどのように持ち込まれ、中国の研究者はどのようにそれを受容していったのか。おそらくそれを日本語で語ることができるのは王前さんしかいないのでは、と思います。

110714_Wang_02.jpg

こんど雑誌『UP』にでる書評を書いた中島隆博さん(UTCP・中国思想)は「王前さんのこの本は政治思想史の本として読まなければなりません」といいます。文化大革命は中国の思想・文化・学問の世界におおきな影響をもたらしました。文化大革命を経て、思想・文化・学問にたいする反省と議論のながれが生まれたとのこと。1980年代をつうじて、ヒューマニズムはマルキシズムの一部なのかという論争を発端にしながら中国の思想・哲学の転換がおこったのだといいます。

110714_Wang_03.jpg

マルキシズムを確保しつつもなにかほかのレジティマシーを「あらたな超越」としていかにうちたてていくのか、これが中国における思想的問題です。これはとても難しい課題でしょう。

110714_Wang_04.jpg

王前さんのこの本はたんなる思想史の本ではなく、王前さんが現実の政治や社会と向き合いつつ、どのように西洋思想を受容してきたのか、それを描いた(いわば実存的な)本だとおもいます。王前さんは中国の古典の知識、西洋起源の社会思想や政治思想にたいする深い理解、現実の社会の問題点を発見することのできる見識、それを理論のもとに切り出す分析力、どれをとっても舌を巻くほど。かれのこれまでの研鑽が詰め込まれた著書を、みなさんもぜひ読んでいただければと思います。とても勉強になりました。

中澤栄輔(特任助教)

Recent Entries


  • HOME>
    • ブログ>
      • 【報告】UTCPワークショップ「中国は現代哲学をどのように読んだか?―東西の出会いと対決」
↑ページの先頭へ