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時の彩り(つれづれ、草) 127

2011.01.13 小林康夫

UTCPの実験(1)
21世紀COEそしてグローバルCOEあわせてほぼ9年間のUTCPの活動を振り返って、あくまでも拠点リーダーのわたしの視点からですが、この間の活動をどう見ているのかを、何回かにわけて、ここで報告させていただきます。

というのも、UTCPで行ってきたことは、今後の人文科学のあり方についての「実験」でもあったわけで、それがどのようなものであるのか、多くの方に知っていただきたいと思うからです。正直に言って、われわれは、現在の日本の大学の環境と予算条件のもとで可能なほとんどあらゆる試みをやってきたと考えています。不十分な点は多々あります。しかし、われわれの活動のなかに「未来の人文科学」のためのヒントはあると自負しています。

ただし、この「実験」の精神がはっきりとしてきたのは、グローバルCOEの時代からです。21世紀COEのときは、わたし自身、このような国際的な学術交流をメインにした研究教育組織のあり方についてあまりはっきりとしたコンセプトを持ってはいなかった。海外から著名な研究者を呼んで国際会議を開催するという基本的なイメージから自由になってはいなかったと思います。ところが、(そのずっと前からもやってましたが)そのような会議をいくつか企画し、開催してみると、もちろん知的な刺激もあるのですが、実際には、企画運営と各研究者への応接だけで疲れ果ててしまい、なにか虚しさが残るということにもなる。自分たちからの発信、そして対等な立場での真の対話という意味では、物足りないものがあるのです。それゆえに、21世紀COEの途中から、わたしはこちらから海外に出かけて行ってシンポジウムを開く、ということを実験的にやるようになります。これはそう簡単なことではない。なによりもまず、相手先の研究者・研究機関とのしっかりとした人間関係ができていなければならないからです。そうしてわれわれのイニシアティヴで北京、ソウル、ヴァンクヴァー、パリ、ミラノ、ベルリンなどでシンポジウムを開催するということをやってきました。グローバルCOEでは「研究」だけではなく「教育」にもアクセントを置くように要請されており、それに従って、こうした発信型の研究のなかに大学院博士課程ならびにPD研究者たちの「教育」を組み込む「実験」が行われるようになります。その実験結果を次回以降、報告します。

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