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時の彩り(つれづれ、草) 124

2010.12.14 小林康夫

一輪の赤い薔薇

 先週は、国際文化会館のありがたいご配慮で、来日中だったガヤトリ・スピバックさんと会食。

鵜飼哲さんら数名の会食者だけだったので楽しくお話しできました。彼女とは1981年だったか、ジャック・デリダの最初のスリジー・ラ・サールでの10日間合宿のときにお会いして以来。そのとき参加者は夜10時すぎにはディスコ状態で踊ったりしていたなか、スピバックさんと向かいあいで踊ったら、彼女が「わがインドでは分数拍子の複雑な拍子があるというのに、あなたはまったくリズム感がない」と厳しいお言葉。いまだに忘れないあの人のあの一言。というわけで、そのときの「お礼」に赤い薔薇を一輪携えて国際文化会館に行ったわけ。いろいろな話をしたなかで、「人文科学の希望は?」と聞いてみたら、「ない」と。う~ん。でも、こういう再会っていいものですよ。これこそ年をとったことのありがたさ。

カスリスさん

 そして先週、金曜は、われらが友人トム・カスリスさんの講演。今度は、空海がテーマ。海外の研究者が懸命に日本の知的財産ともいうべきものに真剣に取り組んで研究している成果の発表だというのに、それに興味をもって耳を傾けようという日本人がほとんどいないのはどういうわけだろう?どうして海外の研究者と「研究の現在」について対話し交流しようとしないんだろう。鎖国マインドによる「引きこもり」現象は日本全体という気がします。

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 でも、そんなわたしの嘆きは関係なく、高田さん、中島さんとわたし、そしてUTCPの若手数人が応答して、熱い議論がかわされました。カスリスさんとはあとで会食に行きましたけど、帰りの電車のなかで、ほんとうに有益な生産的なコミュニケーションだった、UTCPに数カ月滞在したいなあ、と言ってくれました。同じ趣旨のお礼のメールをあとからもいただきました。来年もなにか一緒にできると思います。楽しみです。

エルサレム・ハイファ報告は次回に最終回をアップします。

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