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【報告】「先端科学とヒューマニティーズ」第1回

2010.11.15 中澤栄輔, 守田貴弘, 先端科学とヒューマニティーズ

2010年11月9日,「先端科学とヒューマニティーズ」レクチャーシリーズの第1回目をおこないました.初回は医学部教授でありUT-CBELのリーダー,そして東京大学医学部倫理委員会委員長でもある赤林朗先生にご講演いただきました.

医学部での講義をUTCPで再現するという基本方針のもと,徹底した対話型の講演が展開されました.報告者にとって衝撃的だったのは,いわゆる「新聞沙汰」になった医療関係のニュースを使いながら,現場で何が起こっているのか,何が問題になっているのか,医師はどうすべきだったのかということを参加者に突き付けていったところです.

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生命・医療倫理の問題はどれも,政治的,法的,経済的な側面など,多方面を考慮しながら常に判断を下さなければなりません.そしてどれもが現場で喫緊の問題になっています.限られた時間のなかで,「善悪の価値判断」という意味での倫理的判断をどうすれば行うことができるのでしょうか.そもそも,そのような判断は可能なのでしょうか.

倫理は言語の意味に似ているように見えます.言語の意味は決して固定されたものではなく,時代に応じて変化していくものです.正しい意味だと認識されるのは社会的合意のようなもので,時間をかけて形成されていくしかありません.倫理も,さまざまな事例を通して長所,短所が認知され,社会的に合意が形成されていく過程なのかもしれません.それがやがて法律という形で結実したとき,現場に立つ者は迷わず判断を行うことができそうですが,その時にはまた新しい技術の出現によって,新たな判断を求められる状況が発生していそうです.

だとすれば,判断を行うための枠組みを用意するためにも,医療行為が先端化すればするほど,情報の公開も含め,合意を形成する場を積極的に設けていくことが重要になっていくように感じられました.

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UTCPでは今後,UT-CBELとの連携をはかり,医療現場における生命・医療倫理的問題にかんして人文学からの応答を模索していく予定です.来年の1月にはUT-CBELが生命・医療倫理にかんする第3回GABEX会議を開催しますが,UTCPの若手研究員もこの会議に参加する予定です.生命・医療倫理のための特別のワーキンググループを作るなど,UTCPとしての活動をより活発に推進していく必要がありそうです.

守田貴弘(PD研究員)・中澤栄輔(PD研究員)

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