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【報告】第23回東アジア言語学会 (パリ,EHESS)

2010.07.13 └レポート, 守田貴弘, 近代東アジアのエクリチュールと思考

「近代東アジアのエクリチュールと思考」に所属するPD研究員の守田貴弘がフランス・パリで開催された第23回東アジア言語学会に参加しました (7月1日,2日,EHESS).

この学会は名前の通り,東アジア,東南アジアの言語を研究している人が集ります.中国語関係の発表が多数を占めますが,他にも日本語,韓国語,クメール語,ベトナム語,その他シナ・チベット語族に属する少数言語の発表もあります.それぞれ,対象言語ごとにセッションが組まれますが,私は空間・時間というテーマで括られたセッションで発表しました.

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テーマは日本語のダイクシスで,タイトルはLa propriété spatiale des verbes déictiques japonais dans l'expression du déplacement.現在の類型論では,vector (方向や起点,着点などに関わる), conformation (基準物が点なのか,2・3次元なのかといった形状に関わる),そしてdeixis (話者を中心とした方向に関わる) の3つが「経路」 (path) という概念を構成するとされています.本発表では,動詞の分類,特に直示動詞「行く」「来る」の分析を通じて,経路概念のそれぞれは時間,空間,そして認識・発話の領域に関わるものであり,「経路」として単一の概念でまとめてしまうことができないという主張をしました.

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ディスカッションの時間には,日本語の直示動詞の用法一般あるいはconformationという概念に関する質問が出されました.私の分析では,conformation,つまりアスペクトに還元できない空間的な特徴はconformationだけではなく他にもあるため,なぜTalmyがconformationだけを取り出して経路概念の構成要素として捉えたのか理解できないという応答をしたのですが,少し理論的過ぎる議論になったので,会場にいる人を混乱させてしまった部分もありました.理論に精通していない人にも通じるように表現するのは,今後,論文にするときの課題です.

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1日目の夜そして発表後には,学生時代の先生やスロベニアのアンドレイ・ベケシュ先生らと話すこともでき,今後の研究やUTCPの活動に関わることを少し進めることができた学会出張でした.

(守田貴弘)

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