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時の彩り(つれづれ、草) 102

2010.04.12 小林康夫

キック・オフ・シンポジウム
先週末に、新しいUTCPメンバーを迎えた事務ミーティングとアカデミック・ミーティングが行われました。土曜のキックオフのシンポジウムは、一般公開はしませんでしたが、それはわれわれのメンバーのあいだでの相互理解を確立することが大切と判断したからです。大学という場所は、外に開くことも重要ですが、それ以上に、その内部に密度の濃い場を備えていなければなりません。国際化や社会連携という名のもとに、そのもっとも原則的なところが脆弱になってはいけないということです。

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シンポジウムでは、原和之さんが、昨年、わたしがアラン・ジュランヴィルさんの講演への「応答」として行った発表に、再度、精神分析の側から「応答」してくれました。また中島隆博さんもわたしの『歴史のディコンストラクション』についての包括的なコメントを提出してくれました。もちろん、わたし自身も中島さんの著書『荘子』についてコメントを返しました。このような研究者間の応答はきわめて重要です。人文科学の場合は、共通の戦線が見えにくいこともあって、それぞれの仕事が孤立していることも多いのですが、それではほんとうの意味での「思考の共同体」は生まれないでしょう。だが、いまの大学のなかで、そのような相互的な応答のhabitusがどのくらい根づいているのか、わたしはかなり長い間、大学という組織に身を置いていますが、そのような内的な共同性に出会ったと感じられた瞬間はそんなに多くはありません。しかし、土曜の会は、そういうことが感じられたとても貴重な場でした。原さん、中島さんに感謝すると同時に、このような機会をこれからもっと増やしていきたいと思います。

マンチェフさん、ベルクマンさん
3月にお呼びしたマンチェフさん、ベルクマンさんからもわたしのところにメールが届いています。どちらもシンポジウム、また翌日の映画上映のあとの討論でどれほど刺激を受けたか、と熱い心が書いてあり、さらにどちらも今後の一層の協力関係について、具体的な提案をしてくれています。

またふたりとも、わたしの仏語のコレクションUTCPをきちんと読んで反応してくれていることもとても嬉しいことです。このように、お互いになにかが通じ合って、自分の研究への応答が得られること、それこそ、UTCPの魂です。

相手が同僚であれ、海外の研究者であれ、そのような出来事に、「来い!」と言える態度こそ、わたしがUTCPのミッションと考えていることです。来春は、マンチェフさんを訪ねて、ソフィアに行くことになるかもしれません。すでに「変容と再生」というテーマではどうか、と提案をしてあります。UTCPの冒険はまだ続きます。

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