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欧州連合エラスムス・ムンドゥス「Euro Philosophy」 2010年度

2010.03.21 原和之, Humanities News

今春もまた、エラスムス・ムンドゥスの哲学部門「ユーロ・フィロソフィー」が法政大学で開始される。これは、日本とヨーロッパの教師と修士学生たちが合同でフランス語で集中講義を実施し単位認定をおこなうという画期的な試みである。また、これと関連した講演会も東京と大阪でいくつか開催される。UTCPからは原和之氏が参加し、ピエール・ロドリゴ氏のUTCP講演会が開催される。すべての会で聴講は無料で自由。哲学のヨーロッパの現場と日本の現場とが広く交わるこの絶好の機会に、できるだけ多くの方が参加されることを期待したい。(文責:西山雄二)

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EU・エラスムス・ムンドゥス修士課程《ユーロフィロソフィ》
2010年・法政プログラム

http://hitec.i.hosei.ac.jp/~ERASMUS/

■■はじめに
法政大学大学院は、ヨーロッパ連合(EU)のエラスムス・ムンドゥス修士課程《ユーロフィロソフィ》の正規プログラムを、昨年に続き、本年2010年にも開講します。EUから派遣されてくる教員に日本人教員スタッフが加わり、《ユーロフィロソフィ》から選抜されてくるヨーロッパの学生たちに、4週間にわたってヨーロッパ哲学(おもにフランス哲学)の集中講義を行います。フランス語での授業ではありますが、ヨーロッパからの学生に交じって、日本人学生・市民の皆さんが自由聴講者として参加することが期待されています。ヨーロッパ哲学(おもにフランス哲学)をフランス語で教えまた学ぶということを、あえてこの日本の地で展開することで、ヨーロッパ哲学の現在と日本哲学の現在とを直に接触させ、そのことで、それぞれの哲学の潜勢力を新たに発現させていくことが、このプログラムでは目指されています。
なお、法政大学大学院人文科学研究科哲学専攻の学生がこのプログラムに参加し、最後の試験も受験して一定の成績評価を受けた時には、その成績は法政大学大学院での修了所要単位の一部として認定されます。

■実施期間:2010年3月22日(月)―4月16日(金)
■実施場所:法政大学92年館(大学院棟)[〒162-0843 新宿区市谷田町2-15-2/TEL:03-5228-0551]
■法政プログラム・EU側実施責任者:アルノー フランソワ(フランス・トゥールーズ第2大学)
■法政プログラム・日本側実施責任者:安孫子信(法政大学)
■公式HP:ユーロフィロソフィ http://www.europhilosophie.eu/mundus/spip.php?rubrique105
法政プログラム http://hitec.i.hosei.ac.jp/~ERASMUS/
法政大学 http://www.hosei.ac.jp/

■■2010年法政プログラム
昨年と同じ<形而上学>、<現象学>、<科学哲学>の3科目が開講されます。それぞれの科目は連続12回の講義から構成されています。12回の講義のうちの6回はヨーロッパから派遣の教員1名が、残りの6回は1人2回ずつ、合計3名の日本人教員が担当します(ただし<形而上学>の日本人担当は2名です。うち1名が4回担当します)。1回の講義は120分(授業90分、残り30分は質疑応答)で行われます。

■ヨーロッパ派遣教員(3名)
ポール=アントワーヌ・ミケル(フランス・ニース大学)、ピエール・モンテベロ(フランス・トゥールーズ第2大学)、ピエール・ロドリゴ(フランス・ブルゴーニュ大学)

■日本人教員(8名)
安孫子信(法政大学)、金森修(東京大学)、合田正人(明治大学)、河野哲也(立教大学)、鈴木泉(東京大学)、原和之(東京大学)、藤田尚志(九州産業大学)、村上靖彦(大阪大学)

■科目担当者
<形而上学>:ピエール・モンテベロ/藤田尚志/鈴木泉
<現象学>:ピエール・ロドリゴ/原和之/村上靖彦/合田正人
<科学哲学>」:ポール=アントワーヌ・ミケル/金森修/安孫子信/河野哲也

■■講義タイトル  *講義シラバスは、法政プログラムの仏文要綱をご覧ください。

■<形而上学>:「現代の自然哲学」
◆ピエール・モンテベロ:「自然の一つの形而上学のために」(6講義)
①3/23[3時限] 導入:自然哲学の目指すもの
②3/29[2時限] シモンドンの自然哲学
③3/30[2時限] シモンドンの自然哲学
④3/31[2時限] ニーチェの自然哲学
⑤4/8[3時限] ドゥルーズの自然哲学
⑥4/13[3時限] ドゥルーズの自然哲学、結論

◆藤田尚志:「ドゥルーズかベルクソンか―生の哲学の二つの道」(4講義)
①3/24[2時限] 現代的な生気論哲学とは何か
②3/25[1時限] 二つの生命主義(形而上学分岐)
③4/1[1時限] 二つのイマージュ論(美学的分岐)
④4/1[2時限] 欲望と歓喜 (政治的分岐)

◆鈴木泉:タイトル未定(2講義)
①4/5[3時限]
②4/7[3時限]
■<現象学>:「現象学の諸相」
◆ピエール・ロドリゴ:「哲学の理念―フッサール『危機』における‘生活世界’と歴史」(6講義)
①3/25 [2時限] フッサールの現象学的企図の再開と発展としての『危機』
②3/29[3時限]  フッサールの現象学的企図の再開と発展としての『危機』 / フッサール、ガリレオ、デカルト―近代科学と超越論的哲学
③3/30 [3時限]  フッサール、ガリレオ、デカルト―近代科学と超越論的哲学
④4/10 [3時限]  生活世界の歴史的目的論
⑤4/12 [3時限]  生活世界の歴史的目的論 / 生活世界がもたらす新たな超越論的根源性
⑥4/13 [2時限]  生活世界がもたらす新たな超越論的根源性

◆村上靖彦:「自閉症と分裂病―ステレオタイプ化した遊びと妄想における間主観性」(2講義)
①3/31 [3時限] 自閉症の子供の遊び
②4/1 [3時限] 分裂病の妄想

◆原和之:「悪魔の代弁者の戦略―ラカンにおける‘欲望’概念の練成」(2講義)  ①4/6 [3時限] ラカンとヘーゲル―「欲望の欲望」のもう一つのディメンション  ②4/9 [3時限] ラカンとソシュール―「意味」をどう捉えるか
◆合田 正人:「東西の対話」(2講義)
①4/9[2時限] ハイデッガーと田辺元―「種の論理」と「存在論」
②4/10[1時限] デリダ、パース、鶴見俊輔―もう一つの現象学と記号論

■<科学哲学>:「生物学の哲学」
◆ポール=アントワーヌ・ミケル:「ベルクソン、カンギレム、シモンドン」(6講義)
①3/23 [1時限] 持続の問題は物理の問題でもある(ベルクソン)
②3/23 [2時限] 生命、進化、エントロピー(ベルクソン)
③3/24 [1時限] クロード・ベルナール生理学の批判(カンギレム)
④3/25 [1時限] 医学における統計学的アプローチの批判(カンギレム)
⑤3/29 [1時限] 個体化と結晶化(シモンドン)
⑥3/30[1時限] 個体的なものから生きたものへの移行(シモンドン)

◆金森修:「ビオスとゾーエー、そして‘立ち現れ’」(2講義)
①4/5[2時限] ビオスの政治的含意―現代生政治学についての考察
②4/6 [2時限] 大森荘蔵の哲学―日本の分析哲学の一頂点

◆安孫子信:「オーギュスト・コントの生物学の哲学」(2講義)
①4/7 [2時限] 物理学・化学的なものと生物学的なもの
②4/8 [2時限] 生物学的なものと社会学的なもの

◆河野哲也:「エコロジカルな哲学に向けて」(2講義)
①4/9 [1時限] 「拡張した精神」の概念とJ.ギブソンの心理学
②4/12[2時限] 神経倫理学―「拡張した精神」が神経倫理学に対してもつ意味

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■授業時間
①1時限:11:00-13:00 ②2時限:14:00-16:00 ③3時限:16:30-18:30

■試験日:4/16

■授業日程表
3/22(月)オリエンテーション
3/23 (火)①ミケル②ミケル ③モンテベロ
3/24 (水)①ミケル ②藤田 ③***
3/25(木) ①藤田 ②ロドリゴ ③ミケル
3/29(月) ①ミケル ②モンテベロ ③ロドリゴ
3/30(火) ①ミケル ②モンテベロ ③ロドリゴ
3/31(水) ①*** ②モンテベロ ③村上
4/1(木) ①藤田②藤田 ③村上
4/5(月) ①*** ②金森 ③鈴木
4/6(火) ①*** ②金森 ③原
4/7(水) ①*** ②安孫子③鈴木
4/8(木) ①*** ②安孫子 ③モンテベロ
4/9(金) ①河野 ②合田 ③原
4/10(土) ①合田 ②*** ③ロドリゴ
4/12(月) ①*** ②河野 ③ロドリゴ
4/13(火) ①*** ②ロドリゴ ③モンテベロ
4/16(金) 試験

■教室
(3/24を除く毎日)法政大学92年館(大学院棟)303教室
(3/24)法政大学政策創造科(安信ビル)A501教室 [大学院棟の隣のビル]
http://www.hosei.ac.jp/hosei/campus/annai/ichigaya/campusmap.html
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■■シンポジウム・講演会
 エラスムス・ムンドゥス《ユーロフィロソフィ》の法政プログラムの機会に来日のフランス人講師を招いての各種学術行事が、以下のように予定されています。聴講は自由です。奮ってご参加ください。

■明治大学シンポジウム
◆テーマ:不均衡システムと個体化――ジルベール・シモンドン(1924-1989)の哲学をめぐって――
◆主催:明治大学文学部フランス文学専攻
後援:明治大学国際連携部/エラスムス・ムンドゥス《ユーロフィロソフィ》
◆日時:2010年3月24日(水)15:00-21:10
◆場所:明治大学駿河台キャンパスリバティタワー19階119J室
◆プログラム:
第一部 15:00-16:00合田正人(明治大学):ジルベール・シモンドン入門(日本語)
16:00-16:30質疑応答
第二部 17:30-21:10(司会 藤田尚志、フランス語、通訳あり)
17:30-18:10米虫正巳(関西学院大学):自然とその不均衡システム――シモンドン、ドゥルーズと共に自然を考える
18:15-18:55藤田尚志(九州産業大学):ベルクソンとシモンドンにおける想像力と発明
19:00-19:40ポール=アントワーヌ・ミケル(ニース大学):個体的なものから生命的なものへ
19:45-20:25ピエール・モンテベロ(トゥールーズ大学):シモンドンと自然哲学
20:30-21:10質疑応答ならびに全体討議
◆問い合わせ:mg1957@kisc.meiji.ac.jp

■福岡シンポジウム
◆テーマ:思考と運動――アリストテレス、ベルクソン、メルロ=ポンティ、ドゥルーズ
◆日時:2010年3月27日10:00-18:00
◆場所:九州日仏学館(福岡・赤坂)・5F多目的ホール
◆プログラム:
セッション1――運動と知覚 (司会:藤田尚志)
10:00-10:30 ピエール・ロドリゴ(仏・ブルゴーニュ大学)
アリストテレスとメルロ=ポンティにおける知覚・身体・肉
10:30-11:00 平井靖史(福岡大学)
ブラインドサイトをベルクソン的に解釈する――運動の相のもとに見られた知覚、剥離
か非決定か
11:00-12:00 討議
休憩(12 :00-14 :00)
セッション2――運動とシステム (司会:平井靖史)
14:00-14:30 ポール=アントワーヌ・ミケル(ニース大学)
ベルクソン哲学におけるアリストテレス的カテゴリー(現勢態と潜勢態)の顛倒
14:30-15:00 永野拓也(熊本高等専門学校)
数学的構成の内省的基礎――ブラウアーの直観主義とベルクソン
15:00-15:40 討議
休憩(15 :40-16 :00)
セッション3――運動とイマージュ (司会:永野拓也)
16:00-16:30 ピエール・モンテベロ(トゥールーズ大学)
ドゥルーズにおける思考・イマージュ・信じること
16:30-17:00 藤田尚志(九州産業大学)
デジャヴをめぐって:偽なるものの力と記憶の無為――ドゥルーズか、ベルクソンかIII
17:00-18:00 討議および全体討議
懇親会(18 :30-20 :30) ※どなたでもご参加いただけます(要参加費)。
◆問い合わせ:fujitahi@gmail.com

■大阪大学シンポジウム
◆テーマ:ドゥルーズ、その他
◆日時:2010.4.15(木) 13 :00-18 :00
◆場所:大阪大学人間科学研究科 東館106
http://www.hus.osaka-u.ac.jp/access/access.html
◆プログラム:
13:00 : 檜垣立哉「バロック的時間」あるいは「結晶イマージュの時間について」(未定)
13:35 : 山森裕毅「ドゥルーズと外国語」
14:00 : ポール=アントワーヌ・ミケル(ニース大学)「カンギレムの合理的生気論」
15:00 :森元齋「経験と主体~ドゥルーズの哲学に対するホワイトヘッドの影響と両者の差異」
15:25 : 休憩
15:35 : ピエール・ロドリゴ(ブルゴーニュ大学)「外見と飾り立てること~メルロ=ポンティとドゥ
ルーズにおける身体性と動物性」
16:35 :小林卓也「統合失調症によって自然を組織化し直す~『アンチ・オイディプス』から『千のプラトー』への移行についての素描」
17:00 : ピエール・モンテベロ(トゥールーズ第2大学)「ドゥルーズ、反現象学」
◆司会・通訳 :村上靖彦(講演はフランス語、講演の和訳を配布します。議論は通訳します。)
◆問い合わせ :yasuhikomurakami@gmail.com

■法政大学講演会
◆日時:4月12日(月)18 :30-20 :30
◆場所:法政大学(市ヶ谷)ボアソナードタワー26階A会議室
◆共催:法政大学人文科学研究科哲学専攻/法政大学/エラスムス・ムンドゥス《ユーロフィロソフィ》
◆講師:アルノー・フランソワ(トゥールーズ第2大学)
◆テーマ:教育かつ哲学の挑戦であるエラスムス・ムンドゥス《ユーロフィロソフィ》
◆通訳が付きます。
◆問い合わせ:abiko@hosei.ac.jp

■東京大学講演会
◆日時:4月13日(火)18:30-20:30
◆場所:東京大学(駒場)未定
◆共催:東京大学UTCP/エラスムス・ムンドゥス《ユーロフィロソフィ》
◆講師:ピエール・ロドリゴ(ブルゴーニュ大学)
◆テーマ:メルロー・ポンティとドゥルーズにおける身体性と動物性
◆問い合わせ:hara@ask.c.u-tokyo.ac.jp
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