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時の彩り(つれづれ、草) 086

2009.11.16 小林康夫

世界の人文科学の高等研究施設

先週は、総長とお会いして、グローバルCOE発足以来の懸案でもある「高等研究」のための組織についてお話をするために、UTCPでは世界の状況を調べる資料を作成しました。このような調査がほとんどなされていないこと自体がまずは問題なのですが、調べてみると、すでに世界には人文系の高等研究所のコンソーシアムがあり、東アジアでそこに加わっていないのは日本だけ、という驚くべき結果が浮かびあがってきます。

(この資料については、このサイト上でも公開しましたので、ぜひごらんください)。
「世界各国の人文学の高等研究教育拠点」(PDF/268KB)

まるで航空会社の世界連合のように、世界のトップクラスの大学はそれぞれ国際戦略をもって連携を強めています。いったい日本の大学は、組織として、どのようにこの世界化に対応するのか、それが問われていると思います。
 
人文科学特有のことでもありますが、この状況はわたしが「日本語の壁」と呼ぶものがあります。日本語という世界からは参入しにくい世界のなかで日本の人文科学が自足してしまう。結構高いレベルではあるが、しかし世界からは切り離されているという状況。それを打ち破ることが、まあ、UTCPのような組織の使命と思ってやっているわけです。

当然のことながら、「打ち破る」ためには、海外の著名な学者を呼んできて講演してもらうのではぜんぜんだめ。それは「日本語の壁」を高くするだけです。そうではなくて、双方向的に、こちらから世界に向けて発信することが必要なのです。その活動を、個人ベースではなく、大学という組織として行うことが問題なのです。
 
わたしとしては、かならずしも楽ではなかったこれまで10年近いUTCPの成果を継承して、「世界への扉」となる時限的ではない組織が、この大学に生まれることを祈っています。

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