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時の彩り(つれづれ、草) 055

2009.01.01 小林康夫

☆ 頌春

みなさん、新年おめでとうございます。

存在の危機的なリアリティが一挙にその本質を露呈した昨年でしたが、今年は、それでもなお、その苦しみを通して「人間の希望」が感じ取られる年であることを祈ります。

UTCPも「人間の思考」の責任をいっそう厳しく問い続ける所存です。

どうぞよろしくお願いもうしあげます。

昨年末のブログで予告した通り、昨年、お能の観世宗家よりのご依頼で、今年の歌会初めの御題である「生」に即した小謡を書きましたので、こんなことも一生に一度、ここでご披露させていただきます。もちろんポール・ヴァレリーの詩、そして「正法眼蔵」を本説としています。

「生」というなら、やはり「生きる歓び(la joie de vivre)」をうたいたいと思って書いたのですが、第一稿は不調で没。しかし不思議と切羽詰まった締め切り当日の朝、なぜか30分ほどで書けてしまった第二稿です。なお、お題の「生」はなんと読むとたずねられて、「生(こころ)」と答えました。

 

風立ちぬ
目にはさやかに見えねども
草葉のそよぎ
鳥の声
大地香りて
時は目覚める
世界は動く
その風に心はありや心はなしや
釈迦牟尼仏のたまはく
「過去心不可得、現在心不可得、未来心不可得」
それゆえに
「たれの人か、心にとどこほるべき」
とどこほる心を捨てて
いざいざ生きめやも
砕けよ、波!
湧きあがれ、歓び!
いま虹色の光舞(ひかりまい)
さあさあと
舞い出だす



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