中期教育プログラム「脳科学と倫理」セミナー(4)第2回報告
中期教育プログラム「脳科学と倫理」セミナー4では"Decision Making and Free Will: A Neuroscience Perspective (Kelly Burns and Antoine Bechara [2007], Behavioral Sciences and the Law, 25: 263-280.)" を講読しています。今回はセッション2の報告です.
1 The Neuroscience of Decision Making and Willpower
【本文要約】
一般的に意志力の定義とは、困難に直面しても何事かを成し遂げることを可能にする決断と自制との組み合わせである。このような、将来得られる利益のために、現在の犠牲を耐え忍ぶことを可能にするメカニズムは、複合的な認知プロセスの所産である。このプロセスを支配するのは二個の相互作用しあう別々の神経システムである。すなわち、
(1) ある選択肢の予想させる直近の結果に伴う苦ないしは快を信号として送る衝動的な扁桃体依存的な神経システム
(2) ある選択肢の予想される将来の結果の苦ないしは快を信号として送る内省的な前頭前野依存的な神経システム
である。
このシステムにおいては最終的な決定は、予想される直近の結果ないしは将来の結果がもたらす苦や快の信号の強度によって決まる。たとえば、直近の結果は苦であるが、将来の結果がそれを上回る快である場合、将来の結果の肯定的な信号が直近の結果の苦を耐えるための基礎を形成する。また、将来の結果が直近の結果に比べてさらに快である場合もこれが起こる。
【講読に際して議論された点】
1. ケーキを食べる場合
[A] (1)快<(2)苦:長期的な苦が勝る。⇒ケーキを食べない。
[B] (1)快>(2)苦:短期的な快が勝る。⇒ケーキを食べる。
2. ケーキを食べない場合
[A] (1)苦<(2)快:長期的な快が勝る。⇒ケーキを食べない。
[B] (1)苦>(2)快:短期的な苦が勝る。⇒ケーキを食べる。
が考えられる。しかしテキストではこの比較が行われていいないという指摘があった。
報告者: 西堤優(UTCP共同研究員)
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