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【報告】 大学の夜 「条件なき大学」@早稲田大学生協ブックセンター

2008.05.23 └哲学と大学, 西山雄二

5月22日、早稲田大学生協ブックセンターで「大学の夜:条件なき大学」が開催され、岡山茂(早稲田大学教授)、藤本一勇(同)、西山雄二(UTCP)が登壇した。閉店後の書籍部が会場となって議論が交わされる異例の連続イベントである。

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デリダ『条件なき大学』をめぐって、まず、西山雄二が基調報告をおこない、デリダと教育の問題設定、『条件なき大学』の構成(大学および人文学とグローバル資本主義)と趣旨の説明、信仰告白と大学論の関係について述べた。

続いて、岡山茂がこの著作の意義についてコメントし、大学においては「宗教的な知」「科学的な知」という「知の真昼」に対して、「イマジネールな知」という「非知の闇夜」が存在するという視座を提示した。最後に、藤本一勇はデリダに師事した経験にもとづいて、この哲学者の講義の演劇性について回顧的に語った。

議論の詳述は省略して、この連続イベント「大学の夜」の意義について是非とも記しておきたい。

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2007年秋から開始され今回で5回目となるこの催事だが、閉店後の早稲田大学生協ブックセンターが会場となる。書店の一角にある喫茶コーナーでのトークイベントならジュンク堂書店などですでに実施されていることだが、この催事はパイプ椅子を並べてまさに書棚の片隅でおこなわれる点がきわめて特徴的だ。地下一階にある店内の照明はすべて落とされ、卓上ランプと映写機の灯光が話者を仄かに照らし出し、ライブハウスのようなアングラ的雰囲気である。大学の昼の営みが終わり、夜の帳が下りた後、地下の書店、書棚の狭間の薄暗い場で言葉が紡ぎ出される、という舞台設定である。

担当者・永田淳氏によると、この催事「大学の夜」はデリダの『条件なき大学』に着想を得て企画されたという。それはつまり、議論や発言のための無条件的な場を大学空間の隙間に創造する実験である。筆者(西山)は基調報告で、「なぜ大学という場が必要なのか、なぜ書店という場が必要なのか」と問い、「見知らぬ誰かと共に自分たちが生きている時代につかまれるための場」として大学や書店が必要不可欠だと答えた。このささやかな催事は、そうした大学や書店の根拠律を参加者が共有することのできる貴重な試みと言えるだろう。

条件なき大学は、当の無条件性が告げられうるいたるところで生じ=場をもち、自らの場を求めるのです。この無条件性が、おそらく、(自らの)思考をうながすところならどこにでも。ときには、おそらく、「条件」という論理や語彙を超えたところにさえ。―ジャック・デリダ『条件なき大学』

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この夜は学生のみならず、研究者、他大学の生協書籍部職員、出版関係者ら35名が集い、静かな熱気が感じられた。こうした稀有な催事を果敢に実施されている早稲田大学生協ブックセンター店長・射場氏と担当者・永田淳氏に敬意を表すると同時に、来場された方々に感謝する次第である。

(文責:西山雄二)

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