Blog / ブログ

 

中期教育プログラム「哲学としての現代中国」第5回報告

2008.01.16 高榮蘭, 哲学としての現代中国

中期教育プログラム「哲学としての現代中国」第五回目の報告は、「両替される女性像」という題で、高榮蘭さんによってなされた。

韓国の新しい紙幣の肖像を分析するこの報告は、儒教と女性像をめぐる国家理念の作り方に注目していた。韓国銀行は2007年11月、2009年からの通用を目的に新たな高額紙幣(五万ウォン券と十万ウォン券)の肖像を発表した。貨幣図案諮問委員会が20名の候補人物を選定し、国民世論調査と専門家集団の意見調査などを経た発表の結果、それぞれ金九(十万ウォン券)と申師任堂(五万ウォン券)が高額紙幣の肖像として選定された。後者に集中した高榮蘭さんの報告は、韓国社会のなかで今までも代表的な「良妻賢母」の像(申師任堂は朝鮮時代の儒学者・官僚である李珥の母親であり、李珥は現在韓国で通用される五千ウォン券の肖像でもある)として機能する申師任堂という人物が貨幣に記入される過程を分析することで、韓国の貨幣表象がどのように儒教理念を構築し、利用したのかを解明するものであった。高さんの表現を借りて言えば、韓国社会のなかで儒教とは理念の「入れ子」として作用してきた。入れ子としての儒教理念が、独裁者である朴正熙の考案物であるとすれば(1972年朴正熙が行った維新の直後、儒学者たちは貨幣肖像として登場し始めた)、それは朴正熙(一名、高木正熙)という名で象徴される植民地の遺産との混合体でもある。国家アイデンティティの表象の方式と直接に繋がっている貨幣表象を論じている高さんの報告は、「すると、なぜいま韓国社会は金九と申師任堂を選んだのか」というアクチュアルな問いを呼び起こす議論であると思われる。(報告:李英載)

Recent Entries


  • HOME>
    • ブログ>
      • 中期教育プログラム「哲学としての現代中国」第5回報告
↑ページの先頭へ