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大貫隆 日独共同大学院プログラム学生セミナー

2007.11.22 大貫隆

10月に1ヶ月ほどかけてドイツのいくつかの町を回ってきました。5日(金)から12日(金)にかけては、ハレ市のマルティン・ルター・ハレ・ヴィッテンベルク大学(ハレ大学)で日独の学生を集めて共同学生セミナーとシンポジウムが開催されており、途中、そこにも参加しました。総合文化研究科とハレ大学のあいだで今秋に新しく始まった日独共同大学院プログラム(http://igk.c.u-tokyo.ac.jp/)の記念すべき第1回共同学生セミナーと創立記念シンポジウムです。

日独共同大学院プログラムは、日本学術振興会とドイツ研究協会による新しい国際交流事業のひとつで、日本とドイツの二つの大学が協力して大学院博士課程の共同教育、共同研究を推進するものです。総合文化研究科とハレ大学の組み合わせによるプロジェクトは、このプログラムとしては初めて採択されたもののひとつです。今後、2010年8月までの間、総合文化研究科から最低でも年間6名の博士課程学生(日独共同大学院プログラム登録者)がハレ大学に留学することになります。逆に、ハレ大学からは年間数名の学生が総合文化研究科に留学してきます。そのほかに、教員の相互派遣も行なわれる予定です。

10月11日(木)、12日(金)には、この日独共同大学院プログラムの創設記念式典とシンポジウムがハレ市で開催されました。基調講演者として招かれたのは、ドイツの高名な歴史家であるJ・コッカ氏であり、翌日にはプログラムの共同研究テーマ「Formenwandel der Bürgergesellschaft. Japan und Deutschland im Vergleich(市民社会の形態変容)」を表題に掲げたシンポジウムが開催され、ハレ大学のプログラム参加教員、ドイツ各地から呼ばれた市民社会研究の専門家に加えて、駒場の総合文化研究科からは石田勇治先生「Vergleichende Forschung zur deutschen und japanischen Zivilgesellschaft. Aufgaben und Perspektive aus japanischer Sicht(日独の市民社会に関する比較研究 日本の視点からみた課題と展望)」と私「Zivilgesellschaft und Religion. Japan und Deutschland heute(市民社会と宗教 今日の日本とドイツ)」が報告をしました。

また、式典とシンポジウムに先立って5日(金)から11日(木)にかけて開催された共同学生セミナーでは、日本側15名、ドイツ側9名の計24名の学生全員がすべてドイツ語で研究報告(例外的に1名のみ英語)をしました。参加した日本側の学生は、博士課程の学生から学部生にいたるまで、すべてのセッションでほぼ完全にドイツ語で質疑応答をしたわけですから、これは大きな挑戦でした。ドイツ側の参加教員が学生の研究テーマをよく理解し、熱心にコメントしてくださったため、学生にとっては貴重な経験になりました。

共同学生セミナーは、プログラムの期間中、1年に2回(秋:ハレ、春:東京)ずつ開催されます。今回は初回だったため、日独のプログラム参加学生、参加教員の顔合わせとしての意味がありました。次回、3月12日(水)~19日(水)にかけて東京で予定されている共同学生セミナーでは、博士論文が完成に近づいている学生を中心に報告者の数をしぼり、個々のテーマについてより一層集中的な議論をしてみたいと考えています。ハレ大学のプログラム参加者のうち、日本について研究している学生には、次回は日本語で報告してもらうつもりでいます。

今後も引き続き実施される共同学生セミナーが、学生の研究水準と学術的コミュニケーション能力の一層の向上に資することに疑いありません。大学院教育の国際化がさかんに言われていますが、今回の共同学生セミナーを実施して、このような恵まれた環境のなかに身をおくことのできる今の学生をうらやましくも思いましたし、こちらの設定した高いハードルに果敢に挑む姿を見て嬉しくも思いました。

総合文化研究科博士課程に在籍中の学生に対するプログラム登録の募集は10月中旬をもっていったん終了しましたが、関心のある方は、日独共同大学院プログラム運営委員会(igk[at]igk.c.u-tokyo.ac.jp)にご連絡いただければ、個別の相談に応じる用意があります。

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日独共同大学院プログラム「市民社会の形態変容」創設記念式典

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セミナー風景1

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セミナー風景2

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日独共同大学院プログラム参加学生と教員

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