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ブラジル学会参加報告 原和之

2007.10.09 原和之

ブラジルのサン・カルロスで行なわれた第二回「精神分析の哲学」国際大会、II Congresso Internacional de Filosofia da Psicanáliseに行ってきました。

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サン・カルロスはサン・パウロからさらに車で三時間ほど内陸に入ったところにある地方都市で、今回学会の行なわれたサン・カルロス連邦大学以外にもサン・パウロ大学の理系学部がおかれている大学の町。出発前の案内にあったとおり、会場のキャンパスは森に囲まれていました。

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 今回の学会に参加しようと思い立った理由は二つあります。一つは自分自身の研究発表で、しばらく前から考えていたアイディア---有限性のデザイン、あるいは「限界を象る」試みとしての精神分析---をコンパクトにまとめて発表する機会がほしかったということ。それからもう一つは、「精神分析『の』哲学」を謳う学会が、いったいどのようなものであるかをこの眼で確かめたかったということ。じっさい、長いあいだ反目しあい、近年になってようやく「と」という助詞を介しておずおずと結び付けられてきた二つの学問分野の間に、軽々と「の」を導き入れるということを、いったいどのような人たちがあえてしているのか。たぶんこの疑問が、参加を決めるにあたっては決定的であったといえるでしょう。
 
 学会は24日から28日までの日程で開催されましたが、初日を除いて毎日朝9時から夜9時まで、昼休みの2時間を除いてほぼびっしりと研究発表・シンポジウム・講演が組まれているという、日本のこの種の学会ではちょっと考えられないペース。使用言語はポルトガル語、スペイン語、英語、フランス語ということで、ブラジルとアルゼンチンを中心に、北米、ヨーロッパからも研究者が集まり、院生・ポスドクも含めると総発表者数は100人を超えていました。

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そもそもこうした規模の学会が可能である背景には、精神分析がしっかりと南米の社会の中に根付いているということがあります。(大嶋仁さんの『精神分析の都』などを通じて、アルゼンチンにおける精神分析の隆盛についてはある程度の予備知識があったのですが、ブラジルにも同様の状況があることは今回はじめて確認することができました。)そうしたなかで、この学会の名称のはらむ問題提起、精神分析と哲学のより踏み込んだ関係を模索する試みは、しっかりと受け止められているという印象をもちました。

 大会は今回が二回目で、一昨年行なわれた第一回大会についてはすでに、全2巻、合計900ページを超える大会の記録が刊行されています。

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隔年開催ということで、次回は2009年が予定されているようですが、同様の関心をもつ研究者にとってはたいへん貴重な機会になると思われます。

 今回の参加にあたっては、大会コーディネーターのRichard Theisen Simanke 教授(サン・カルロス連邦大学)、Vladimir Safatle 教授(サン・パウロ大学)、また研究発表のポルトガル語訳をしてくださった Ada Jimena García=Menéndez さんにたいへんお世話になりました。改めて御礼申し上げます。

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