【報告】 吉本光宏氏セミナー+レクチャー
去る4月22日(火)と25日(金)、NYU東アジア学科准教授吉本光宏氏をお招きしてセミナーとレクチャーが行われた。概要は以下のとおり。
◆UTCP若手研究者セミナー「映画/帝国」
4月22日(火)17:00~19:30
●発表:
畠山宗明(東京大学)「映画で身体がなし得ること―ロシア・ソビエト映画におけるスペクタクルと身体」
李英載(東京大学・UTCP)「申相玉が生きた三つの国家―軍用トラック、プルガサリ、ゴジラ」
●コメント: 吉本光宏(ニューヨーク大学東アジア学科准教授)
●司会: 前田晃一(神戸市外国語大学)
若手研究者セミナーは吉本氏の著書『イメージの帝国/映画の終り』に対する応答として、映画と帝国の問題を広い歴史的・地理的コンテクストで捉えなおそうとする試み。
まず司会の前田さんから、吉本氏の「帝国」という用語はネグリ・ハートの「帝国」という用語から区別しなければならない、ということが指摘されたあと、畠山さんがエイゼンシュテインやグリフィスらの映画において、演劇とのジャンル分けを明確にするために抑圧された「イメージ化された身体/身体化されたイメージ」の問題について多岐にわたる発表を行った。
つづいて李さんが、最初韓国朴正熙政権のイデオローグとして活躍し、のちに北朝鮮に渡って金正日の全面的支持のもと映画を革新し、最後はハリウッドにわたって活動を続けた怒涛の映画監督、申相玉について発表。韓国・北朝鮮におけるナショナルシネマと国家のアイデンティティ、それらと大日本帝国の関係について問いを発した。
吉本氏からは、2人の発表について「いったいどこで、誰に向って言葉を投げかけるのか」という問いが発せられ、抵抗の場を開く可能性について討議がなされた。
◆UTCPワークショップ「陰謀・暴力・イメージ」
4月25日(金)17:00~19:30
●講演者: 吉本光宏(ニューヨーク大学東アジア学科准教授)
●司会: 平倉圭(東京大学・UTCP)
映画『JFK』(オリヴァー・ストーン監督、1991)とそれが引き起こした激しい論争をめぐって、イメージ‐暴力‐陰謀という問題の内的関わりについて分析するレクチャー。現在進行中の原稿ということなのでここに詳細を記すことはしないが、1991年に生じた映像分析と司法の関係の変動、そして陰謀としてのイメージをめぐって、きわめて刺激的なレクチャーが行われた。分析と法をめぐるこの問題は、映像操作・編集が一般化した現在、私たちの手元に遍在している。会場からは多くの質問がなされ、活発な討議が行われた。
報告: 平倉圭