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【報告】ドイツ語哲学カフェ「Kaffeekränzchen: Philosophie-Jause」

2024.11.01 桑山裕喜子

2024年10月14日ドイツ語哲学カフェ「Kaffeekränzchen: Philosophie-Jause」が開催されました。このイベントは、ドイツ日本研究所(DIJ)のゼバスチャン・ポラック・ロットマンさんとUTCP特任研究員の桑山裕喜子による運営で、関東に居住中のドイツ語母語話者・ドイツ語話者が集まり、共に決めたテーマ「前進・進展」(Fortschritt)について議論が盛り上がりました。

 2024年10月14日(月)15:30から17:30にかけて、ドイツ語哲学カフェ「Kaffeekränzchen: Philosophie-Jause」が東京大学駒場第一キャンパス18号館4階コラボレーションルームにて開催された。参加者は主にドイツとオーストリアのドイツ語母語話者、第二言語話者、および若干名のドイツ語学習者が総じて18名集まりスタートした。運営はドイツ日本研究所(DIJ)のゼバスチャン・ポラック・ロットマン(Sebastian Polak-Rottmann)さんとUTCPの桑山裕喜子による。二人とも、東京以外では「哲学カフェ」をすでに経験済みだが、東京で開催するのは初めてであったのもあり、当日は若干緊張した。

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 まずは運営者の紹介に続き、ドイツ語哲学カフェPhilosophie-Jauseのコンセプトについての説明から始まった。主催者が経験してきたヨーロッパの哲学カフェから学んだことに限らず、日本国内ですでに鳥取県智頭町などで導入されている(地域の住民同士が集まって話し合う場づくりの意味でのコミュカティヴ・スペースの一環としても発展する)哲学カフェについても紹介した。今回、報告者が運営に際して特に強調することにしたのは、普段、同じ都市や街に住みながらも、異なる生活環境を生きる他者とまず一つの場を分かち合ってみるという最初の一歩である。また、他者の考えに耳を傾けること、そして共に考え、ときには共に悩んでみたり、自分の意見を他者に伝わる言葉に置き換えてみたり、という動きを実践してみる、という点も一緒に強調してみた。ゼバスチャンさんによるルール説明では、今年3月に智頭町で実施された山泰幸先生(関西学院大学)主催の哲学カフェでのルールを参考に、「相手の意見について、批判はしてもいいが、否定はしてはいけない」点には特に重点が置かれた。

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(写真は、参加者でディスカッションのテーマを決めているところ。)

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(当日集まった議題案たち。どれも面白いテーマが並び、選ぶのはなかなか難しかった。)

 第一回ドイツ語哲学カフェでは「前進」や「進展」を意味するFortschrittがテーマに選ばれた。報告者としては、これはどうなるかな、と一瞬心配にもなったが、比較的はじめから「進展・前進」が果たして常に積極的な意味を持つものかどうか、という批判的な視点が議論にあがり、盛り上がった。中国の経済成長の例や、原子力発電や原子力爆弾というテクノロジーの発展による世界の抱える課題や問題もがさまざまな角度から議論された。議論のスタイルの特徴としては、自分が何を経験したのか、あるいはどうそれに触発されてきたか、といった比較的個人的な内省を含んだ声はあまりみられず、現代のさまざまな社会問題や政治的問題を例に「前進・進展」の持つ両義性が焦点となるのが目立った。

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 次回の哲学カフェでは、個人的な経験や視点について話してもよい、という点が一度強調されてもよいかもしれない。余談であるが、せっかく「前進・進展」がテーマに上がったので、UTCPの斎藤幸平先生のコンセプトでもある「脱成長」についてもふれられれば、などと思っている間にあっという間に哲学カフェは終了してしまった点は残念であった。また、中には同じ人が何度か続けて話してしまうということもあったが、その人自身が途中から「自分は話しすぎた」と反省するに至り、他の人の意見を優先する側に回る姿が見られたのも、嬉しいところであった。参加者の男女比は、男性の方が圧倒的に多いのは確かであったが、年齢層に関しては20代から80代にまで及ぶ参加者が見られた。幅広い年齢層が来られる会となった点は印象深い。

 終了直前に参加者一人一人に感想を述べてもらった際、すでに次回の哲学カフェを心待ちにしているとの意見が数多く出たため、運営者側でこれから定期的に哲学カフェの実施を続けることに決定した。さまざまな言語での実施を長期的には目指しているが、まずは第一回のドイツ語の会が盛況であったことはドイツとオーストリアのドイツ語話者である運営者にとっては何よりも嬉しいことである。宣伝等を含め、運営に協力してくださったドイツ日本学研究所と、当日実際に足を運び、参加してくださったすべての方に改めて感謝申し上げたい。運営者一同、次回をすでに心待ちにしている。

報告: 桑山裕喜子

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