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【開催報告】刑務所アート展x哲学対話「かべの手ざわり」

2024.09.04 ライラ・カセム

刑務所アート x 哲学対話「かべの手ざわり」開催報告

2024年3月29日(金)@BUoY北千住

去年から開催されている「刑務所アート展」 。UTCPでは2024年3月29日(金)に第2回刑務所アート展を主宰している PAC (Prison Arts Connections)と共催イベント 刑務所アートx哲学対話『かべの手ざわり』を開催しました。展覧会では初となるUTCPの取り組みを紹介します。

PAC はアート展の企画や開催を通して刑務所の内と外、被害と加害を越えた対話と回復の契機を生み出す活動をするために設立された団体です。
NPO法人マザーハウスの文通ボランティアを通して全国各地約800名の方に周知し作品を募集。その中から約10%の受刑者が応募した作品が、今回北千住にある展示・カフェスペースBUoY(ブイ)で「刑務所アート展」の一環として展示されました。
展示は作品だけでなく、展示の背景もわかるように作品それぞれに使用された素材や刑務所における表現活動などについても丁寧に紹介されていました。

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展示のテーマは「私の大切な時間」。送られた作品は絵画だけでなく、書道や作文、詩など10種類のカテゴリーを跨ぐものでした。

イベントは2部制にし、各部2時間開催しました。冒頭30分は運営メンバーの鈴木さんと展示の発足と経緯のクロストークをし刑務所アートの文脈への理解を深めました。他者との対話方法が限られた刑務所で作品を通した新たなコミュニケーションと他者理解を深める方法もこの活動をPACとして始めるきっかけとなったそうです*全国の刑務所でのアート(表現)活動の度合いや頻度は疎らで絵画クラブがあったりなかったりと表現の機会は場所それぞれで統一された取り組みは現在ないそうです。創作材料は一般に売られているさくらクレパス、ゲルペンや蛍光ペンなどどこにでもあるもので、種類が限られているのが刑務所アートの特徴です。受刑者が刑務所内の仕事で貯めたクレジット・単価を貯めてそれぞれ入手して作品に取り組んでいました。紙1枚もらうのも許可が必要でカラー鉛筆を手に入れるのに数ヶ月かかることもあるそうです。
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トークの後は作品を通した対話のワークショップを開催しました。参加者は20分ほど自由に作品を観覧した後、4〜5人のグループに分かれ、気になった作品を紹介しあいました。作品はまず感覚で決めてもらい、その後配布したシートにその作品の名前と第1印象を書き、グループでシェア。その後再び作品に戻りその作品から感じとる色、テクスチャーと味覚/匂いを書き、再びグループとシェアしアート鑑賞の対話を深めていきました。それぞれのグループを回るとみ「思ったより字が綺麗で達筆な人だからじぶんとちがってほんとはちゃんとした人かもしれない」とか、「カギカッコを忠実に書こうとして正しさを求めようとしているのかもしれない」など、作品そのものの魅力だけでなく、作品の作者について想像しながら喋っていたのが印象的でした。
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その後全体ディスカッションでそれぞれ感想を述べる中で議題は1部も2部そもそもアートとは人になって何か?というディスカッションへと変わっていきました。

「作品そのものよりもどうして描いてるかが気になった。芸術をみるってことはそもそも(書かれた)背景を知ることだとおもった。」

「アートはみた者がいるからこそ成り立つ」

「アートの良さはものの入口としていい。美しさなどみやすさでとっかかりをつくってくれてそこからみる人に疑問を生み出してくれる。どんな解釈も受け入れてくれる感じがする」

など、それぞれ2時間に及ぶイベントはどちらも対話が絶えず盛り上がり、あっという間に終わりの時間となりました。刑務所という究極の現場だからこそ、改めて人間にとって表現することとは何か、を考えさせられる機会となりました。作るにしても、観るにしてもアートというものは自分と向き合わせてくれるものなのかもしれません。

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この展示で紹介された作品はすべてPACのウェブサイトでオンライギャラリーとしてみられますのでご興味ある方はぜひご覧ください。
https://pac-j.com/2024/?c=gallery

(文・写真 ライラ・カセム)

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