梶谷真司 邂逅の記録108 こまば哲学カフェ復活！～オンラインでの対話の実験的試み
こまば哲学カフェは、2013年～2018年、駒場祭の時に3日間、外部の人ともコラボしつつ哲学対話の実験的な試みを行った。私自身が哲学対話の活動を始めて間もないころで、とにかくいろいろとやってみたくて、学生に提案して運営してもらった。
演劇や落語と組み合わせたり、コスプレをしたり、目隠しをしたり、今思い返しても、自由で過激で、面白かった。駒場祭で哲学対話に出会って今や常連という人もいる。当時コラボした人の中には、いまや自分で独自の活動をしている人もいるし、NPO団体を作った人、本を出版した人までいる。けれども、その後しだいに関わる学生が減り、昨年はとうとう開催されなかった。いささか寂しいことではあったが、役割を終えたということでもあろう。実際、哲学対話（もしくは「子供のための哲学」）は、この間に驚くほど広まり、NHKでも取り上げられるほどになった。
＊ETV視点・論点「『考える力』を育てる『哲学対話』」
"https://www.nhk.or.jp/kaisetsu-blog/400/426694.html
ETV特集「7人の小さき探求者たち」
"https://www.nhk.jp/p/etv21c/ts/M2ZWLQ6RQP/episode/te/Y8G67491KX/
ところが、コロナの影響で人が集まることがほとんど不可能になり、哲学対話イベントも軒並み中止に。その後、オンラインでの対話が自然発生的に生じてきた。対面での対話との違いに物足りなさを感じる人もいれば、その気楽さに魅力を感じる人もいるようだ。私としても、リアルなイベントがなくなって時間もできたし、オンラインだからできる対話とは、どのようなものでありうるのか、いろいろと試してみたくなった。そういう実験的な試みの場として、こまば哲学カフェを復活させようと思い立った。
そこでまず4月25日（土）に、企画会議のイベントを行い、上のような趣旨を説明した。そして私が企画を作る相談に乗る、「こまば哲学カフェ」の企画として開催できる、UTCPのホームページとP4EのFacebookページで「関連イベント」として告知する、といったサポートをすることにした。
そしてまず私自身が企画を立てることにした。年末に「いかにして愛のために出会いの場をデザインするか」と題して、恋愛・婚活のイベントを行い、ゲストで招いた井上敬一さんと石原鉄兵さんとコラボをすることになっていた。その流れで「恋愛と結婚のあれやこれやをめぐる対話」を企画した。恋愛と結婚について何でもかんでも自由に広く深く対話をシリーズ化する予定で、まずは第一弾として5月6日に「問いを見つけるワークショップ」を行った。
参加者は60人ほど。Zoomのブレイクアウトセッションという機能を使い、グループワークをしてもらった。1グループあたり5～6人で、それぞれ5つずつ問いを見つけてもらった。
このようなやり方をしたのは、哲学対話において、どのように問うかが重要だからである。哲学（対話）とは、「問う・考える・語る・聞く」であり、問いがあって初めてきちんと考えることができる。ところが問いを見つけるのは必ずしも簡単ではないし、個々人が思いつく問いにも限りがある。いろんな人で問いを出せば、自分では思いつかないような問いも出てくる。たくさん出てきた問いの中から選べば、たいていはいい問いが選ばれる。
こうして当日10グループで5つずつ、合計50個の問いが出された。今度はそれを私のほうで似たもの、関連したものは整理したり、別の言葉に変えたりして整理し、以下の問いのリストを作った。
・恋愛は必要か？
・結婚は必要か？
・見合い結婚か恋愛結婚か？
・出会いの場はどこにあるのか？
・一人の人を愛し続けるのがいいのか？
・関係を続けるのはなぜ難しいのか？
・恋愛や結婚において対等な関係とは何か？
・お金がないと恋愛も結婚もできないか？
・AIやロボットと恋愛・結婚はできるのか？
・結婚を前提としない恋愛は遊びか？
・一緒にいることは二人の関係にとってどれくらい重要か？
・どんな相手と一緒にいるのがいいのか？
・体の関係はどれくらい重要か？
・・・・・
今後、これらのテーマを順に対話イベントを開催していく予定である。当面はとにかく繰り返してオンラインで対話するメリットやデメリットを確かめ、どうすればより良い対話の場が作れるか、またオンラインならではの対話の面白さを発券していければと考えている。
今後のイベントは、Facebookページ〈Philosophy for Everyone〉で告知する。
https://www.facebook.com/Philosophy-for-Everyone-372041092876484/
（梶谷真司）