【報告】こまば当事者カレッジ2019年度冬期コース第1回「ひきこもりからグループ/コミュニティを考える」
こまば当事者カレッジ2019年度冬期コース「ひきこもりと居場所」の初回として、12月28日に板東充彦さん(跡見学園女子大学心理学部)をお招きし、「ひきこもりからグループ/コミュニティを考える」というタイトルでレクチャーとワークを実施いただきました。
板東さんは臨床心理士として様々な臨床現場に関わりながら、ひきこもりの方々のサポートグループを立ち上げ、14年間ボランティアでグループの運営を継続されてきました。レクチャーの前半では、一般的なセルフヘルプ・グループになじみにくいひきこもり当事者の方々を対象に、治療ではなく「居られる」を目指した場作りを、板東さんが具体的にどのようにされてきたのかをお話いただきました。板東さんの場合、もう1名のスタッフとその時々で最大で10名の当事者の方とで、自己紹介/前回の感想に始まる90分のセッションを隔週で行っていく形での実施です。そこでは、話し手の相談を「みんなで聞き合う」という受容的な場作りによって、どんな人も排除せずに受け止め合うことが可能になっていたということでした。
続くレクチャーの後半では、板東さんがサポートグループの運営と並行して行っていた、セルフヘルプ・グループの代表者会議の立ち上げと継続についてお話いただきました。月一回、集まった人たちが話したいテーマでフリーディスカッションする場を作っていくなかで、心理職としてカウンセリングする関わりではなく、また専門職同士の対等な関係とも異なる中で、ご自身の立ち位置が徐々に意識化されていったとのことです。このような当事者との関わりについて、「支援する/される-医療モデル」「生活者として共に生きる-コミュニティ・モデル」という概念図式を参照しつつ説明いただきました。
プログラム後半のワークでは、板東さんに用意いただいた「新しいグループ/コミュニティを作りたい」「セルフヘルプ・グループ運営上の困難について」というテーマの他、「運営者コミュニティを作るには」「上下関係のないグループ/コミュニティを作るには」というテーマを参加者の方々に出していただき、グループディスカッションを行いました。
ディカッション後の全体共有では、グループ問わず対等なグループ/コミュニティ作りと継続的な運営の難しさが話題になったことが分かりましたが、それとともに新しい形のグループ/コミュニティへの期待感を参加者のみなさんと共有する時間にもなりました。(報告:中里)