【刊行】精神障害を哲学する 分類から対話へ
東京大学総合文化研究科准教授の石原孝二が東京大学出版会より『精神障害を哲学する 分類から対話へ』を刊行しました。
主要目次
はじめに
第I部 狂気と精神医学の哲学
第1章 狂気と理性
1 古代のギリシアとローマにおける狂気と哲学
2 共通感覚の概念
3 狂気と理性の他者
4 ロックと共通感覚
5 カントによる「あたまの病気」の分類の試み
6 感覚の錯覚と理性の欺瞞
7 他者の視点の取得と共通感覚
8 狂気と理性的主体
第2章 近代の疾病概念と精神医学の成立――精神医学はなぜ常に「遅れている」のか
1 シデナムの疾病概念
2 存在論的な疾病概念の否定と器官‐機能主義
3 局在論者と器官‐機能主義
4 病原体理論の確立と存在論的疾病概念
5 一八世紀後半以降における狂気の分類体系の整備
6 「精神医学」という語の登場
7 専門分化と病院――精神医学の専門化は遅れたのだろうか
8 クレペリンの疾病概念
第3章 生物学的アプローチと精神病理学
1 脳機能局在論
2 脳機能局在論への反応
3 ヤスパースと現象学的精神病理学――精神障害をもつ人の経験を理解するとはどういうことなのか
4 現象学的精神病理学の展開と限界
5 薬物療法と精神病理学
第II部 精神障害の概念と分類
第4章 認知症、統合失調症、自閉症の系譜学――統合失調症と自閉症はなぜ重要な精神障害となったのか
1 知的障害と認知症
2 統合失調症の概念形成
3 統合失調症とスティグマ
4 自閉症の系譜学
第5章 DSMとICD――精神障害を分類する試みの現代史
1 ICD‐6における「精神および行動の障害」の章の登場
2 DSM‐IとDSM‐II
3 DSM‐IIIと記述的アプローチ
4 潜在的に生物学主義的な医学モデルと新クレペリン主義
5 スピッツァーによる非生物学主義的な医学モデルと精神障害の定義
6 DSM‐5とディメンジョナル・アプローチ
7 DSM/ICD体系の終焉(?)とRDoCプロジェクト
第6章 精神障害の哲学――「自然種」と「有害な機能不全」モデル
1 精神障害は自然種か
2 自然種とボイドのHPC種
3 クーパーの自然種概念
4 ウェイクフィールドの「有害な機能不全」モデル
5 個人化モデルとしての機能不全モデル
第7章 同性愛と精神障害の概念
1 精神障害の定義の諸条件
2 同性愛をめぐって
第III部 地域精神医療と当事者
第8章 地域精神医療と対話的アプローチ
1 生物・心理・社会モデル再考
2 精神病院の位置づけの変化
3 脱施設化と地域精神保健への移行
4 イタリア・トリエステモデル
5 オープンダイアローグ
6 オープンダイアローグとニード適合型アプローチ
7 オープンダイアローグを支える制度と研究
第9章 当事者による活動
1 Alleged Lunatics’ Friend Society
2 ピアサポート/セルフヘルプグループ
3 Consumer/survivor運動――解放とケア
4 リカバリーの思想
第10章 当事者研究のインパクト
1 「当事者」の概念
2 当事者研究の誕生
3 当事者研究のコンテクスト
4 当事者研究と現象学
5 反精神医学と当事者研究
6 当事者研究の展開
7 当事者研究の意義
終 章 精神障害と精神医学の行方