Blog / ブログ

 

【報告】スティーブン・スミス教授講演会

2018.06.11 梶谷真司, 中島隆博, マーク・ロバーツ, 佐藤麻貴

駒場キャンパスにて、東京大学ヒューマニティーズセンター(HMC)とUTCP共催、東大友の会支援、イェール大学マクラミラン国際地域研究所後援で、第11回山川健次郎記念レクチャーが開催された。今回は、イェール大学の政治学・哲学教授のSteven Smith先生をお迎えした。

180508_1.jpg

Smith先生はシカゴ大学にて博士号を取得され、1984年からイェール大学で教鞭を取られ、現在は政治学部のAlfred Cowles Professorを務められている。又、これまで、政治学部の大学院専攻長、人文学の特別プログラム長、ユダヤ学・学科長、ブランフォード・カレッジのマスター(1996-2011)等を歴任されています。先生は主に宗教と政治の関係、立憲政体論について研究され、Hagel’s Critique of Liberalism (1989), Political Philosophy (2012) など多くの著書を出版され、その研究、教育活動の功績としてRalph Waldo Emerson 賞や Lex Hixton ‘63賞などを受賞されている。

5月8日(火) 駒場での講演会は、HMC(東京大学ヒュマニティーズ・センター)とUTCP(総合文化研究科附属共生のための国際哲学研究センター)の共催で開催され、学内外から学生、研究者等19名の参加者があった。中島隆博先生からの開会の挨拶に続き、 Smith先生から “Political Philosophy and the Dark Arts” というタイトルで講演を頂戴した。 この講演会では、スミス先生がDark Artsと名付け、総称する政治哲学理論について、話していただきました。

180508_2.jpg

Dark Artsの具体例として、国家秩序の維持のため、しばしば国家秩序維持という大義名分に基づき、権力や暴力を応用することによってその秩序が保たれるケースについて触れられた。すなわち国家安全のための国家による諜報活動(警察、国家安全保障局等の存在)は、時と場合によっては、短期的悪(個人のプライバシー侵害、嫌疑者への拷問など)を許可し、それを正当化することにより、より長期的な最適性(国家秩序の維持)を模索する方向へ動きがちであることについて説明された。時代に応じた大義名分を維持するための悪を許容するDark Artsを、どのように政治に参画する一般市民は判断すれば良いのか。こうした判断基準を議論できるようにするためには、政治を志す者のみならず、社会の一員である個人個人の意識を高めるための教育が必要である。また、社会参画する者の政治的責任として、想像力そして最も重要な判断力、すなわち自ら思考し、比較検討の上、判断し決意する能力を身につけなければならないと、指摘された。加えて、結論に変えて、現代の哲学者はそういった政治的判断力を培う義務があるとされた。

180508_3.jpg

事前勉強会と称して、学部生を中心にSmith先生から事前に頂戴していた関連文献の勉強会を二回にわたり、駒場で開催した。事前勉強会において得られた知見を基に、45分の講演の後、事前勉強会に参加してくれた学生諸君を中心に、多くの参加者から質問が寄せられた。1時間以上に渡り先生と参加者の間で大変活発な質疑応答、議論がなされ予定時間を超えての盛況な講演会となった。(文責:佐藤麻貴)

Recent Entries


  • HOME>
    • ブログ>
      • 【報告】スティーブン・スミス教授講演会
↑ページの先頭へ