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【報告】Roger T. Ames氏講演会”Confucian Role Ethics: A Challenge to the Ideology of Individualism”

2017.04.16 梶谷真司, 石井剛, 川村覚文, 八幡さくら, マーク・ロバーツ, 石渡崇文, 佐藤麻貴

2017年2月22日(水)駒場キャンパス101号館研修室において、Roger. T. Ames氏(北京大学)による講演会が行われた。

当日は約15名の参加者が集まり、Ames氏の講演とディスカッションが行われた。Ames氏が担当していた授業を受講していた学生も何人か参加していた。

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まずAmes氏は、中国哲学や中国文化を西洋に導入する際に、西洋の類似するカテゴリーに近づけることによって、中国哲学を理論化する傾向にあったという状況を説明した。しかし、Ames氏によれば、儒教の役割倫理は中国哲学が独自の道徳哲学を持っていることを明らかにする可能性を持っている。Ames氏は自身の近刊書
”Confucian Role Ethics: A Vocabulary”を引きながら、儒教の役割倫理が自由な個人主義への挑戦となっていると主張した。そして、これまで欧米人によって儒教思想、とくに孟子の「心」の概念がどのように翻訳され、理解されてきたのかをAmes氏は説明した。「心」はbodyheartmindingと訳され、世界理解や、家族や共同体における人間関係の構築、人格の形成に深く関わっている。Ames氏は、こうした中国哲学についてこれまで様々な研究者が、超越論的な原理としての「神」概念を必要としていないということや、翻訳に関わる言語と思想の関係などを議論してきたことを整理した。

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さらにアリストテレスのカテゴリー分けに基づいた自己充足的な人間理解に対して、儒学思想においては自己を養っていく「修身」こそが奨励される。様々な文脈や他者との関係の中で変容する自己が人間であり、そうした関係の中でhuman becomingつまり人になるということ、「成人」こそが人間である。

最後にAmes氏は中国哲学における「文化」について触れ、自発的に自己変容していくものを文化だと主張した。そのような例として芸術とりわけ絵画を取り上げた。Ames氏はこのような発展的な概念の説明として、中国における山水画を例に挙げ、時代を追いながら山水画の描かれ方の変遷を紹介した。

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質疑応答では、西洋の近代以降の神存在の否定といった時代的な関係性や、西洋におけるキリスト教的な神と人間の関係性と東洋における宗教観の違いなどが議論になった。また今日における哲学の学習方法や、現代の世界情勢に対して真理や哲学研究の果たすべき役割が質問に上がった。Ames氏は、人間の生き方や権利に関して、アジア文化や思想がヨーロッパに対して大きな役割を果たしうることを指摘した。中国人の留学生や中国哲学の研究者とは、中国語を交えながら諸概念についての意味の確認や解釈が行われ、議論がより深められた。

文責:八幡さくら(UTCP)

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