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【報告】Conflict and Justice: Precarious Bodies in Inter-Asia Societies Winter Camp Workshop

2017.03.24 川村覚文

2017年1月16日から20日にかけて、台湾新竹市においてConflict and Justice: Precarious Bodies in Inter-Asia Societies Winter Camp Workshopと題するウィンターキャンプが開催された。宿泊場所は国立清華大学、ワークショップ会場は国立交通大学という、台湾におけるカルチュラル・スタディーズをけん引する大学のジョイント・プログラムとして企画された本イベントには、アジアを中心にした国々から多くの大学院生・研究者が参加し、UTCPからは川村覚文が参加した。

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本プログラムにはアジアを中心にした4つのテーマが設定されており、(1)間アジア社会におけるナショナリズム、移民、プレカリアスな身体(2)アジアにおける社会運動、係争、政治変動(3)間アジア社会における新自由主義、グローバリゼーション、腐敗(4)ネオリベラリズム時代における自然と環境的正義への問い、といったものであった。これら4つのテーマにそって、それぞれゲストスピーカーによる講演と、参加者によるワークショップが組まれ、活発な議論がなされていた。本報告者は、テーマ(1)のグループに属し、Popular political discourse in contemporary Japanと題した発表を行い、戦後日本の大衆的政治運動とその言説について議論をおこなった。

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今回の参加を通じて、本報告者にとって大変印象的だったのは、まず本プログラムが、具体的な政治的・社会的問題をテーマにしたうえで、それらに対する学際的かつ思想的・理論的な介入がいかに可能であるのか、ということを問うことを主眼にしたものであり、参加者もそれを理解していたということである。社会的・政治的問題と思想・哲学的問題を別個のものとして捉えがちな傾向にある我が国のタコツボ化されたアカデミアとは大変対称的なものとして、報告者の目には映った。また、もうひとつ印象的だったのは、本プログラムの参加者が、北東アジアから南アジアまでといった大変広い範囲の出身者であり、かつ、必ずしも自国の大学や研究機関に所属していない形で活動している、まさしくトランスナショナルな人たちであったということである。このような人たちを世界から集めることができる訴求力を、本プログラムがもっていることに大変大きな驚きをもつとともに、感銘を受けたのであった。

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しかし、それとともに感じたのは、アジアの中でさえ日本は取り残されつつあるのではないか、という大きな危惧である。本プログラムの参加者に共有されていたのはある種の危機感であり、そのような危機感の共有のもとに様々な熱い議論が(しかも英語で)なされていた。それに対して、日本で生活するものはそのような危機感から目をそらすことにあまりに慣れすぎており、本プログラムで議論されている事自体の重要性が、全く理解できない、あるいは自らの事として捉えることができないのではないだろうか。そう考えると、日本の置かれている状況はあまりに深刻なのではないか、と思わざるを得ない。このような状況を克服するには何をすべきか。この問いへの見通しの暗さに愕然としてしまうが、その処方箋としては、今回のようなイベントに積極的に参加していくことでネットワークを形成していくしかないのではないかと提案しつつ、本報告を閉じたいと思う。

文責:川村覚文(UTCP)

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