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【報告】The 3rd UChicago-UTokyo Joint Workshop on Japanese Studies

2016.11.08 中島隆博, 李範根

さる2016年10月18日、東京大学・シカゴ大学の大学院生による合同ワークショップが、東京大学・本郷キャンパス所在の東洋文化研究所の第1会議室にて開催された。第3回目を迎える本ワークショップは、両大学間の戦略的パートナーシップ事業の一環として企画されたもので、今回は両大学から10名の院生が参加した。参加学生たちは、「日本研究」に関係する様々な問題系を、哲学、宗教、視覚芸術、民衆史などの観点から取り扱い、研究発表を行った。以下では、本ワークショップの様子を、東京大学からの参加者の一人である、李範根(UTCPリサーチ・アシスタント、総合文化研究科・博士課程)より、ご報告申し上げたい。

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午前10時10分、合同ワークショップを始めるにあたり、まず、両大学の教員(東京大学・中島隆博教授、シカゴ大学・James Ketelaa教授)による開会挨拶が行われた。2人からは、このワークショップが、両大学の院生たちにとって、互いの研究状況および学問的成果を確認する機会になるのみならず、若手研究者としての人的ネットワークを形成するための契機になることを期待するとの話がなされた。

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開会挨拶後、10時30分より、大学院生たちによる研究発表が本格的に始まった。本ワークショップにおいては、参加学生の研究テーマをもとに、2人の発表者が1つのパネルを構成するかたちで、計5つのパネルが設けられた。その5つのパネルのテーマは、1)Disaster and Its Remembering, 2) Before and After Xuan-zang, 3) Imaging, Imagination, and Ideology, 4) Transcendence through Philosophy and Religion, 5) Transformation through Sound and Wordであった。ここで、すべての発表の様子を詳しく紹介する余裕はないが、さしあたり、報告者が配置されていた第3パネルのメンバーによる研究発表の内容と様子を紹介することにしたい。

報告者は、シカゴ大学のSandy Lin氏(博士課程・美術史専攻)とともに、パネル3)Imaging, Imagination, and Ideologyにて研究発表を行った。2人の発表において共通の題材となっていたのは、「視覚芸術」とそれにまつわるイデオロギーの問題である。報告者の発表内容は、日本・沖縄・韓国の写真事情を手がかりにして、ナショナルな写真史のあり方を批判的に検討することであった。一方、Lin氏の発表は、明治期に創刊された雑誌『國華』を取り扱い、その雑誌において採用されていた木版画の製作技術の内実を緻密に分析し、その技術「自体」に内包されているイデオロギーの問題を考察するものであった。

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発表後に行われたディスカッションでは、まず、お互いの発表に感じた印象や、疑問点などを共有する時間が設けられた。その後、一般聴衆も交えてディスカッションが行われたが、その際、発表者2人への共通の質問として、それぞれの写真および版画作品が、どのような層で受容されていたかについて、より繊細な配慮が必要なのではないかという指摘がなされた。その指摘は、ジャンルを異にしているものの、同じく「視覚芸術」(あるいは、媒体を通して見る/見せる営み)を取り扱うという共通点を持つ発表者たちにとっては外せない問題であったため、貴重なアドバイスであったと思われる。

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それぞれの発表が終わった後、約1時間、フロアにいる全員により、総合ディスカッションが行われた。そこでは、10人の発表者において議論された内容の再検討も含め、これまで/これからの「日本研究」という領域のあり方などについての話がなされた。また、今回のワークショップにおいて、ジェンダーの観点が、それほど取り上げられなかった経緯に触れ、それぞれの発表者の今後の研究課題において、ジェンダーの観点が検討される余地はないかについても議論が重ねられた。約1時間のみの、ディスカッションだけでは、十分に話し尽くせないものもあったが、それは、このワークショップにおいて提起された問題系が、それだけ議論の蓄積を必要とするものであることの裏返しであると言えよう。

報告者にとって、今回のワークショップは、「日本研究」、広くは、「人文学」そのものが、アメリカと日本、あるいはその他の地域においていかに取り組まれているか、その内実を確認できる貴重な経験であった。今回の両大学院生の学術交流が、お互いの研究に刺激を与え合う触媒剤として、今後も機能されていくことを期待したい。

文責:李範根(UTCP・RA/東京大学大学院博士課程)

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