梶谷真司「邂逅の記録84:第24回国際哲学オリンピック in ベルギー(1)」
2016年5月12日(木)から15日(日)まで、第24回国際哲学オリンピックがベルギーのヘントで開催された。今回は、周知のとおり、3月にブリュッセルで同時テロが起き、いったん情勢が不透明になった。それ以前に昨年11月、パリで、数十人がテロの犠牲になったこともあり、そのときからベルギーはテロリストとの関連が指摘され、警戒レベルも上がっていた。
IPO事務局のほうはその後間もなく開催の意向を発表。ヘント自体は小さな町でテロの標的にされるとは考えにくいこと、国内では警戒レベルが上がり、治安維持のためにできる限りのことはしていること、しかし100パーセントの安全はありえない、だからもし参加しないとしても、それは理解する、というメッセージが付されていた。
するとすぐさま、各国が哀悼の意を伝えるとともに参加の意を表明した。とはいえ、正式な参加登録はしばらくの間なかなか進まず、例年よりも少なくなるかと思われた。私自身は、今回審査委員の一人になっていたので、大会そのものが中止にならない限り、高校生が行くかどうかに関わらず参加するつもりでいた。その後日本のほうでも現地の情報収集をし、ブリュッセルを避けるなど必要な対処を取り、ご両親や学校、そして何より本人の意向を確認し参加を決めた。最終的には、昨年の39カ国より多い44カ国が参加した。国内選考から国際大会派遣まで支援してくださった公益財団法人・上廣倫理財団には心より感謝する次第である。
今年の日本代表は、岡山の操山高校の塚原遊尋君と、広島学院高校の石川智輝君だった。二人とも、サマーキャンプ、冬の選考会に何度も参加し、お互いもphriends(哲友)になっている間柄である。今年の1月に行われた選考会で、見事なエッセイを書いて代表となった。
11日の夜10時に塚原君と石川君、もう一人の引率者、林貴啓さんと羽田空港で集合し、明けて12日0時50分の便でフランクフルトへ。そこからアムステルダムへ接続した。フライトを予約したとき、まだブリュッセル空港が再開していなかったのと、市内の治安がどうなっているのか分からなかったので、ブリュッセルを通らずに、アムステルダムへ飛んで、そこから電車でヘントに入ることにした。
列車が少し遅れた以外、移動はほぼ予定通りで、2時すぎにヘントに到着。宿泊先となるホテルへ行って受付を済ませた。その後一緒にランチを食べに行き、私たち教員は4時からIPOの今後について話し合うミーティングに出席。6時からは市役所のホールでオープニングセレモニーがあった。
テロがあって、一時的にせよ開催が危ぶまれただけに、参加者の間には例年以上の連帯感があるように思えた。教員どうしも再会をことのほか喜んだ。関係者の挨拶のあと、テロの犠牲になった人たちを追悼し、全員で黙祷をささげた。続けて行われたウェルカムパーティーでは、塚原君も石川君も、ずっとこの世界大会を目指して頑張ってきただけあって、まずは来たことに歓喜していた。二人ともさっそくいろんな国から来た高校生たち友だちになり、語り合っていた。
*IPO 2016 ベルギー大会のHP http://www.ipo2016.be
(続く)
文責:梶谷真司(UTCP)