【報告】「てつがくって、サークルだよね♡」
2015年10月3日(土)15:00-17:00、東京大学駒場キャンパス 21KOMCEE(West) 303において、主に大学生を対象とした哲学対話サークルの立ち上げイベント、「てつがく、ってサークルだよね♡」が開催された。当日は、会場となった21KOMCEE(West) 303いっぱいに90名ほどの人々が集まる盛況ぶりであった(参加者の7割程度が大学生)。
まず梶谷真司先生(東京大学・UTCP)から趣旨説明があった。その冒頭では、今回のイベントを企画した背景として以下の3つのことが説明された。
第一の背景としては、部活としての哲学対話の可能性およびその実践(開智学園高校、開成高校、筑波大学附属駒場高校など)が紹介された。なお、この部活としての哲学対話の決起会にあたる「哲学は部活だぁ!」というイベントを開いた際にも、大学生と高校生とのつながりが重要である次第が確認された。そうした点でも哲学対話サークルがあることで高校生とともに哲学対話をする大学生(主としてファシリテーターとしての大学生)がいるというのは意味があるのではないか、ということであった。
第二の背景としては、大学における哲学対話の広がりが説明された。いくつかの大学で哲学対話の実践が広がりつつある一方で(立教大学、上智大学、筑波大学、高千穂大学など)、他方、これらの大学間のつながりはそれほど密ではない、という現状である。また大学には哲学(対話)サークルがなくても哲学対話に興味を持った学生は多くいる。そうした人のためにも大学の垣根を越えて哲学対話ができる場があってよいのではないか、ということであった。
第三の背景としては、社会的背景が話された。哲学対話イベントへの一般人(社会人)の参加も増えてきており、また地域コミュニティづくりにも哲学対話が実践として有効であるという事例もでてきている。このように哲学対話がコミュニティづくりの有効な手段としても今後ますます広がっていくことが考えられる。こうした現状にあって、哲学対話そのものを中心に据えながらも気軽に人が集まれる場があるのは好ましいだろう。そうした場所のひとつとして大学のなかに哲学対話をする場所があってよいだろうし、そこに地域の方や社会人が関わっていくということはモデルとしてありうるのではないか、ということであった。
趣旨説明の中盤では、梶谷先生の「てつがく、ってサークルだよね!」の掛け声の後に「イエーイ!」とみんなで唱和する場面があり、哲学対話サークルの立ち上げ会に相応しい盛り上がりを見せた。梶谷先生によれば哲学対話サークル(テツサー)には、(1)出会いがある(青春)、(2)「てつがく」がある(探求)、(3)仲間がいる(共生)、という3つの意義があるとされる。もちろん、この立ち上げイベントそのものがこうした「探求する仲間との出会いの場」であったことは言うまでもないが、先の掛け声に対する唱和はそれを象徴するような一幕であったように思われる。
趣旨説明の最後には「提案」として、普段の活動としては研究会(ファシリテーションの練習、読書会)を開いてはどうか、定期的にイベント(学園祭などでの哲学対話、対話イベントへの協力、哲学対話合コン[テツコン]、など)を開催してはどうか、特定の大学の大学生だけではなく、大学間の垣根を越え、さらには社会人・地域の方々との交流といったものを展望するようなものとしてはどうか、といったことが話された。
さらに哲学対話サークルの運営に関しては、学生主導で行うべきである次第が述べられた。ただし、その際には、特定の大学の学生が主導するのではなくて様々な大学の学生による共同運営(そして例えばUTCPがその場を提供する)が望ましく、そこには教員によるサポート(大学間のコネクトおよび学生[新入生]の勧誘など)、社会的なつながりおよび協同があってよいだろう、とも言及があった。
梶谷先生の趣旨説明を踏まえて、その後は学生とその他(一般人、大学教員)とに分かれて1時間ほど対話形式で今後のことについて話をしてみた。もちろん、ここですべてのことを決めることは困難であったし、また求められたわけではなかったが、学生の方ではポータルサイト(facebookでのページ作成)とイベントの開催について話がなされた。あまり具体的な話は詰められなかったものの、初回の集まりとしては上々の出だしだったのではないだろうか。少なくとも今後もこうした集まりを持っていくための一歩にはなっただろう。
その後、会場を18号館に移して “コンパ” (ノンアルコール)が催された。2時間ほどであったが、学生どうし、また社会人と学生など多種多様なつながりができたようである。なお、このコンパの準備に関してはL3プロジェクトの阿部ふく子氏の他にも、同じくUTCPのスタッフである、伊野恭子氏、佐藤空氏、井芹真紀子氏、菊間晴子氏に大いにお力添えをいただいた。記して感謝申し上げる。
とにもかくにも全体を通じて見えてきたのは、哲学対話に興味を持っている学生は決して少なくはなく、それをつなげてひとつのムーブメントをつくっていくことには大いに意味がありそうである、ということである。執筆者(安部)自身は、学生(院生)生活も残り僅か(あと2年ほど!?)という状況ではあるが、こうしたことに関わることができたことは嬉しいかぎりである。こうした新たな動きを、「若い力の結集」と安易に一括りにすることは厳に慎まねばなるまいが、それでも今回集まった大学生を中心としたこの力が次の一歩を踏み出すことが今から待ち遠しい。そこに執筆者自身も何らかの形で関わりを持てればと思う。
安部 高太朗
(UTCP RA研究員/東京大学大学院教育学研究科 博士課程2年)