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梶谷真司「邂逅の記録78:P4T(Philosophy for Teachers)研究会決起大会「哲学は部活だぁ!」(3)決起大会当日」

2015.08.18 梶谷真司, 土屋陽介, 神戸和佳子, 阿部ふく子, 安部高太朗, Philosophy for Everyone

今回のイベントは、もともと知り合いの先生たち6~7人だけ来ていただいて、内輪で話をするつもりでいた。しかしせっかくだからオープンにして関心のある人には、教員に限らず来てもらおうと思った。日時は、当初から声をかけていた先生たち全員がそろうように時間調整した結果が、水曜日の夜だった。

そこでポスターを作るにあたって、4月から来た新しい特任研究員の阿部さんに、「体育会系で作っておいて」と頼んだところ、インパクト抜群のポスターを作ってくれた。そのおかげもあってか、Facebook上では、告知後わずか1時間で閲覧回数が8000回を超えるという反響ぶりだった。当日は、平日の夜にもかかわらず、総勢30人近く、学校の先生が約半数、それ以外に一般の人、大学生、さらには高校生まで参加してくれた。

部活はやはり声を出していかなければ!ということで、まず私が「哲学は部活だぁ!」と叫び、その場にいた一同みんなで「部活だぁ!」と続いて叫ぶ。それを3回繰り返して会合が始まった(やっぱり声を出すと違うな。一体感が出る)。

まず私のほうから、今回の企画を立てるに至った経緯を説明した。前の(1)と(2)で書いたようなことだ。とにかく、学校の中で、かつ教科の枠の外で、興味のある生徒と先生が集まって自由に行う活動として、他の部活と同じように「哲学部」を作ると、哲学が学校の中でよりよい形でできるようになるのではないか、ということだ。

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さらに、やりたい人が集まることで、中高生どうし、あるいは先生と哲学を通じた新しい人間関係ができるという点も重要だ。哲学好きの中高生というのは、学校の中で浮いていたり沈んでいたり、本気で話ができる友だちがいなかったりする。だからこそ、学校の中で、あるいは他の学校にそういう友だちができたら、それは特別な友だちになる。大学生や大学の先生とも仲良くなれるかもしれない。そんなつながりは、哲学だからこそできるにちがいない。

これは、サマーキャンプや1月の選考会に参加した高校生たちを見ているとよく分かる。彼ら、彼女らは、2日だけ、それも遊んでいたわけではなく、エッセイを書いたり、グループワークをしていただけなのに、ものすごく仲良くなる。今年など、1月に一緒になった高校生たちが、そのあと3月に自分たちだけでキャンプをやっていた。大学院生とも親しくなり、中にはUTCPに遊びに来たり、講演会に来てくれた高校生もいる。

だから、部活で哲学をするメリットを、私は「自由だ!」「やりたい!」「一人じゃない!」の3つにまとめた。そのうえで私から提案したのは、「出張」「企画」「支援」の3つである。

「出張」とは、学校で特別授業のようなイベントを行う場合、こちらから私なり学生が出張するということ。「企画」は、合宿や他の学校との交流会をしたり、特別セミナーを行う場合、その企画にも実施にも協力するということ。「支援」は、哲学部の活動をするさいに相談やアドバイスなど、必要なサポートをするということ――以上を説明した後、参加者から様々な意見や質問が出た。

教員の間では「部活」というと、面倒くさい、また仕事が増える、というネガティヴなイメージがあるとか、「哲学」などというと、他の先生や保護者から奇異な目で見られる。生徒のあいだでも、「哲学が好き」なんて言えば、冷やかされる、等々。やはり学校で哲学を取り巻く環境はキビシイ!

私が当初「部活」にこだわった理由は、それに関わる先生の活動が、学校からきちんと認知してもらえるのではないか、また外からも分かるように看板を掲げれば、他校との交流がしやすくなるのではないかということだった。ただ、その後間もなく分かったのだが、多くの学校で部活の数は教員の数に応じて制限されていて、近年削減の傾向にあるらしい。したがって、「哲学部」を新たに作るとなると、他の部をつぶさないといけなくなる。これは大変だろう。それに部活にしたら、その維持のために新入生勧誘をしないといけないが、「哲学」では集まらない、という意見もあった。

そういう意味では、同好会やサークルのような緩やかな集まりのほうがいいだろう。固定した組織でなくても、イベントがあったらその時に集まるメンバーがいれば、同じ趣旨のことは十分できる。

実際、埼玉県の開智高校で哲学対話の授業をやっている土屋陽介さんは、授業を通して哲学対話に興味をもった生徒たちが、今年の文化祭で哲学対話のコーナーを設けるらしい。また8月2日には、開智の中学生が企画した対話イベントを駒場で開催することになっている。ここには他の学校の生徒も参加できるし、中高生に限定しているわけでもないので、先生や子供をもつ親、一般の人も来るだろう。これも一つの形だ。

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それでも、やはり学校の中で活動するのは難しいという意見もあった。とくに「哲学」というだけで、周りからネガティヴな反応があるような学校では、同好会すら難しいだろう。そういう場合は、上のような学校外のイベントに参加してくれればいい。

他方で、年に1回の特別講習のような形でいいから、生徒や、場合によっては先生、保護者にも入ってもらって哲学対話のイベントをすれば、周囲の理解も得られ、次第に学校の中でもできるようになるかもしれないし、外部のイベントにも参加しやすくなる。そうやって生徒にとっても、先生にとっても、学校や保護者にとっても、哲学が身近なものになり、「哲学」と聞いたら「面白そう!」と思う人が増え、「行こう!」とか「行っておいで!」とか「やってみよう」となればいい。

また、参加していた大学生のほうからは、興味をもった人たちでサークルを作っても、人間関係が固定していて、新たなメンバーが入ってこなくて、結局その人たちが卒業したら終わってしまい、なかなか続かないし広がらない、という現状を教えてもらった。これは、大学を超えた、あるいは、大学生以外も関わる活動の場ができれば、解決するかもしれない。そのために、中高生との交流はいいきっかけになるのではないかと思う。

このように「哲学」をネタにして、いろんな人たちが関わるボーダーレスな場を作ることができれば、いろんな人たちにとってプラスになるだろう。そのためにUTCPとしてできることは、可能な限りやっていきたい。

文責 梶谷真司(UTCP)

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