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【報告】2015年度東京大学―ハワイ大学合同比較哲学夏季インスティテュート準備会(2)

2015.07.04 川村覚文, 井出健太郎, 佐藤麻貴, 安部高太朗

2015年8月、東京大学はハワイ大学と共同で比較哲学夏季インスティテュートを開催します。今回は、本インスティテュートに向けた準備会の第2回目の模様を報告します。課題テクストはRyuichi Abe “Semiology of the Dharma; or, The Somaticity of the Text”で、それをもとに議論が行われました。

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2015年6月18日(木)午前10時30分から、サマー・インスティテュートに向けた勉強会の第2回目が101号館2階研修室で行われました。

今回の検討文献は阿部龍一氏(ハーヴァード大学教授)の著作から空海の言語論を扱ったもので、Ryûichi, Abé (1999) “Semiology of the Dharma; or, The Somaticity of the Text”, in: The Weaving of Mantra: Kukai and the Construction of Esoteric Buddhist Discourse, Columbia: Columbia University Press, Chapter. 7, pp. 275-304.でした。この検討文献において、阿部氏は空海の言語論を、現代フランスの哲学者ジェック・デリダ(Jacques Derrida, 1930-2004)の言語論と重ね合わせて見ており、空海においても言語の機能は「差異化(differenciate)」であったと見ています。空海の言語論でも、言語がモノよりも先行しているわけです(一般的には、モノがあってそれにラベルのように言語[名詞]が当てられると捉えられがちですが、これの反対です)。また、ひとつめの文字である、「अ(a)」が、その他の文字のすべての要素を体現しているものとして空海において捉えられている次第が記述されていましたが、これは第1回目の勉強会で読んだ、井筒俊彦の『意識と本質』(1983年)の禅の対話などで見られる「本質」をめぐる議論と相同的でしょう。

報告者(安部)は、検討文献中の仏教用語を英訳したものがよくつかめず全体の理解まで及びませんでしたが、英語でのディスッカッションをするなかでお互いにこう思うという意見を述べることで視野が徐々に開けていき、理解を深めることができたようにも思っています。ただ、8月まではまだ時間がありますし、全体としても英語でディスッカッションを深めていくにはもう一歩準備をしていかねばならぬ状況でしょう。それぞれの意見を言うだけではなくて議論をするように心がけ、こうした力も高められたらと感じられた勉強会でした。

文責:安倍高太郎(UTCP/東京大学大学院博士課程)

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