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【報告】国際哲学オリンピック合宿・選考会

2015.01.31 梶谷真司, 江口建, 小村優太, 佐藤麻貴, 神戸和佳子, 崎濱紗奈, 安部高太朗, Philosophy for Everyone

2015年1月17日(土)・18(日)、国際哲学オリンピック代表選考会および直前強化合宿が、東京の国立オリンピック記念青少年総合センターにて行われた。今年は日本全国から16名の参加があった(中学生も1名参加)。昨年7月30日(水)・31(木)に行われた「高校生のための哲学サマーキャンプ」に参加し、その後の予選を勝ち抜いて今回の本選に来られた高校生も少なくないようであった。

初日の17日(土)は、北垣宗治先生(同志社大学名誉教授)より参加者へ向けて「あなたたちの前途は洋々と開かれており、この2日間力を出し切ってほしい」との激励のお言葉からはじまった。その後、林貴啓先生(国際哲学オリンピック日本組織委員)と梶谷真司先生(国際哲学オリンピック日本組織委員長/UTCP)とからそれぞれ国際哲学オリンピックについて説明がなされた。

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林先生からは「国際大会の概要・評価基準」と題して、国際哲学オリンピックの概要と、実際にどのような基準でエッセーが評価されているのかについて説明があった。2014年のリトアニア大会で出題された課題が示され、近年では東洋系哲学から一題入ることが多いなど課題の傾向についても言及された。また、評価基準については5つあって、(1)トピックとの関連(Relevance to the topic)、(2)トピックについての哲学的理解(Philosophical understanding of the topic)、(3)主張の説得力(Persuasive power of argumentation)、(4)論理の一貫性(Coherence)、(5)オリジナリティー(Originality)のそれぞれについて説明された。本選であっても、英語の文法的間違いなどで減点されているというわけではなく、きちんと課題文を読んだ上でそれに自らがどのような問題を設定して論じるかがポイントとなるとのことである。

梶谷先生からは「思考の組み立て方」と題して、エッセーライティングについて説明がなされた。特に強調されたのはエッセーのストラクチャーについてである。ストラクチャーは“マジックナンバー3”をもとにして全体テーマに関連するトピックを3つ設定して記述していくという構成方法について説明がされ、何を伝えたいかをわかりやすく書くことの重要性が強調された。

林先生・梶谷先生からの説明の後に、参加者は課題文を読んで哲学対話を行い、それについてエッセーを書くという活動をした。まず、参加者は、次の2つの課題文から1つを選んでグループに分かれ、哲学対話を行った。

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「昔、私は蝶となる夢を見た。ひらひらと舞い、まさに蝶になりきっていた。蝶でいるたのしさでいっぱいになり、自分であることが分からなくなっていた。まもなく目が覚め、そこで我に返った。さて、先ほど私は蝶になる夢を見る人間だったのか、それとも今自分は蝶で人間になった夢を見ているのか、どちらかわからない——荘子」

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「もし私たちに共感する能力がなかったら、すなわち、自分を他者の立場に置き、その人の苦しみが自分と同じようなものだということが分からないなら、倫理的に推論をしても、どこにもたどりつかない。理性を伴わない感情が盲目であるとしたら、感情のない理性は無力である——ピーター・シンガー」

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高校生はこの2つから1つ選んでグループごとに哲学対話をした。
筆者(安部)が参加したのはシンガーの方のグループだったが、「共感」ができるとはどのようなことか?であるとか、他者の気持ちがわかるとはどのようなことか?であるとかといった問いが出された。参加者は互いに質問をしたり意見を述べたりすることで、議論を深めていたように思う。

その後、それぞれ選んだ課題文にそって、実際にエッセーを書くという活動を1時間ほど行った。参加者2名あたりに1人のチューターがついてエッセーライティングがなされた。中高生は先ほどの哲学対話でのやりとりも参考にしつつ、梶谷先生から説明のあったとおりにテーマ設定と問いを決めていた。チューターとして筆者も参加したが、担当した高校生が問いを深めていき、その論理を形作る営みを共にできたことはなかなかよい経験となったし、率直に言って、高校生の思考・発想の豊かさに圧倒された。

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夕食を共にした後に行われたのは、倫理・哲学グランプリ予選で応募した中高生のエッセーについて、チューターならびに参加者の中高生相互間での個別講評がなされた。彼ら/彼女らは予選・本選を戦う“ライバル”なわけだが、こうした相互検討の時間に「確かに、その論点は面白いね」とか「こういう視点は私にはなかったなー」などとお互いのエッセーのよさを認め合い、また自分の書いたエッセーを省みている姿はとても印象深く残っている。議論は尽きなかったが、初日は2日目の本選に向けて早めに就寝することとなった。

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2日目の18(日)は、朝食後すぐに選考試験(本選)が行われた。2時間半という長丁場であったが、中高生はそれぞれ力を尽くしてエッセーを書いた様子である。選考の結果が出るのは今月末とのことであるが、いずれも珠玉のエッセーとなっていることだろう。2日間を通して筆者は中高生の(思考も含めた)若さとエネルギーに圧倒されたが、それは率直に言って、自分には無いものへの眩しさから来たものだったと思う。彼ら/彼女らがキラキラと輝いて見えるのは、そのしなやかな感受性と思考との賜物なのかもしれない。今後も、彼ら/彼女らはお互いを尊重しあい「哲学する」ことを大切にしていくことだろう。こうしたつながりが今後も広がっていけばと思う。

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(報告:安部高太朗)

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