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2014年度東京大学-ハワイ大学夏季比較哲学セミナー準備会(4)

2014.09.10 川村覚文, 神戸和佳子

2014年8月にハワイ大学において開催された、東京大学―ハワイ大学共同比較哲学セミナーの四回目の準備会の様子を報告します。今回で準備会は最終回となり、ハワイ大学助教授の石田正人氏の論文を読みつつ、「地理」(geography)概念を巡って議論を行いました。

7月28日(月)

7月28日(月)の準備会では、この報告の執筆者である城間がハワイ大学の石田正人先生の論文 “The Geography of Perception: Japanese Philosophy in the External World”の概要を発表した後、ディスカッションへ移った。

今回扱った石田先生の論文は、D.ヒュームやJ.P.サルトルといった西洋の哲学者と、西田幾太郎に道元という日本の哲学者あるいは思想家とを現象学的な観点から同列に論じた、ユニークな論文である。ただ、哲学に関する歴史記述というこの論文のもつ性格上、準備会に参加している学生に哲学についての専門的な知識がなければ上手く議論が進まないのではないかという危惧を抱いていたが、川村氏や神戸氏のリードに加え、英米系の哲学に通じている学生やフランス哲学を専門とする学生からの積極的な発言があり、時には議論が煮詰まる場面もあったものの、時間一杯意見の交換がなされた。

議論の流れをごく手短に説明すると、まず、geographyという概念を拠り所に空間性を導入する石田先生の論法が、京都学派の哲学者のそれと似通っていることの指摘がなされ、そこからデカルト的な主観と客観との対立を批判した京都学派へと議論の焦点は移っていった。

議論では様々なことが話題となったが、geographyという概念の吟味は実際のセミナーでよい議論の題材となるのではないかと思われる。例えば、石田先生は論文中で政治的な話題には全く言及されていないが、にもかかわらず、geographyという概念が、全体性を志向した結果全体主義に与してしまった京都学派のように、政治的な含意を帯びてしまうおそれはないだろうか。

また、各自の専門的な知識に応じ、デカルトの哲学やサルトルの哲学に関する興味深い意見や問いが学生側から提出され、議論が盛り上がる場面もあった。中国を母国とする学生からは、論文中で重要視されている肉体と心(mind)との間の関係が中国哲学においてもまた重要であることの指摘があった。

今回の準備会では、ややコーディネーターのリードに頼り過ぎかと思われる局面もあったので、学生が専門的な議論にもより主体的に参加できるようになることが今後の課題だろう。とはいえ、実際のセミナーでの議論に向け石田先生の論文がカバーしているトピックの多様さが確認された有意義な準備会であった。

(文責:城間正太郎)

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