【報告】第6回UTCP沖縄研究会
2014年5月30日、第6回UTCP沖縄研究会が、駒場キャンパス101号館研修室で開催された。
今回のUTCP沖縄研究会は2014年度総会として開催した。会の代表である久野マリ子教授(國學院大學)が冒頭のご挨拶をされ、また小熊誠教授(神奈川大学)、渡辺美季准教授(本学)にもご参加いただき、学生・社会人のメンバーを含めて12人が集った。
久野マリ子先生(國學院大學)
渡辺美季先生(本学) 小熊誠先生(神奈川大学)
1、
総会ではまず、内藤が2013年度の活動報告を行い、第1回(2013年4月12日)~5回(2014年3月14日)までの、各研究発表、輪読についての内容が説明された。下記に概要を明記したが、詳しくはUTCP沖縄研究会のブログ報告を参照されたい。
・第1回 2013年4月12日(金)
研究発表:西原彰一
発表タイトル:「沖縄における「なまえ」をめぐって―主に近代以降の「なまえ」をめぐる視点、視座の整理について―」
・第2回 2013年6月7日(金)
研究発表:崎濱紗奈
発表タイトル:「「沖縄」アイデンティティ形成史―伊波普猷の「同化」と新川明の「異化」」
輪読:折口信夫の『国文学の発生』「第一稿」
輪読発表:崎濱紗奈
・第3回 2013年9月6日(金)
研究発表:吉田直子
発表タイトル:「沖縄戦の語り継ぎがもたらすもの―他者理解を経由する学びの創造の観点から―」
・第4回 2013年11月15日(金)
研究発表:城間正太郎
発表タイトル: 「沖縄方言論争に見る柳宗悦」
輪読:折口信夫『国文学の発生』「第二稿」
輪読発表:内藤久義
・第5回 2014年3月14日(金)
研究発表:堀川直子
発表タイトル:「次世代沖縄系日系人のエスニックアイデンティティの様相――人類学的アプローチから」
輪読:折口信夫『国文学の発生』「第三稿」
輪読発表:崎濱紗奈
また、4月13日(日)に神奈川県横浜市鶴見区沖鶴会館で開催された、琉球民謡登川流関東支部大城康彦民謡研究所(代表:大城康彦登川流師範)の花見会に、沖縄研究会の西原彰一さん・崎濱紗奈さん・古里友香さん・井上理恵さん・木野彩子さん・内藤が参加したことが報告された。
鶴見区には沖縄県出身の方々が戦前より多く住まい、独自のコミュニティが形成されている。相撲大会、運動会なども行われており、当研究会では今後鶴見区で聞書き調査を行う予定であり、コミュニケーション作りの一環として参加させていただいたものである。当研究会の古里さん、崎濱さん、木野さんが飛び入りで歌と踊りで参加し大声援をいただいた。
2、
前述したように当研究会では、鶴見区の沖縄コミュニティの聞き書き調査を行いたいとの意見が出ており、今回の総会で承認された。これにより西原さんから調査内容・期間などが説明された。内容は以下の通りである。
・UTCP沖縄研究会による鶴見での「聞き書き」について
1.概要
横浜市鶴見区の沖縄出身者コミュニティを対象に、琉球民謡登川流関東支部大城康彦民謡研究所(以下「大城教室」)を窓口として、UTCP沖縄研究会としての聞き書きを行う。そのテーマ、内容については、参加する研究会会員各自それぞれの関心、問題意識に依り設定するものとする。したがって複数のテーマが並列するものを目指す。期間(開始と終了)については特に定めず、息の長い活動を目指す。ただし数年(3年程度)を経た段階でその成果を取りまとめ発表することを目標とする。
2.事務局(連絡窓口)
聞き書き作業の円滑化、相互の意思疎通、トラブルの回避と解決のため、連絡窓口としての事務局を設置する。崎濱、古里、西原の三名がそれにあたる。事務局がおこなう当面の業務は以下の通り。
2-1 全体の把握
・聞き書き参加者、団体の把握(メンバー、テーマ等)
・予定の把握(月単位での事後報告)
2-2 横浜鶴見沖縄県人会、大城教室との調整
・ 連絡、調整
・ イベント等の情報発信
2-3 定期連絡会の実施
・一定期間(隔月〜三ヶ月ごと)ごとに現状報告を行い、また情報の共有をはかる。
2-4 成果物の取りまとめ、発表
3.今後の予定
3-1 説明調整会の実施(8月1日)
・参加個人、団体についての確認
・各自のテーマについての全体としての確認
・基本的なルールについての確認
3-2 横浜鶴見沖縄県人会、大城教室への挨拶(6月14日)
3、
UTCP沖縄研究会の名称について、崎濱さんから会名についての意見が出された。〈沖縄〉という呼称について、古来より沖縄と記されていた記録はあるが、本来〈琉球〉と呼ばれていた地域が、明治政府の琉球処分以降沖縄と命名されたものであり、また沖縄とは沖縄本島をさし他の周辺島嶼についてどのように捉えているのか曖昧である。しかし〈琉球〉という名前も中国語由来のものであり、当研究会の名称として何がふさわしいのかという疑問の提示である。沖縄・奄美諸島研究会、南方研究会等の意見も出されたが、当研究会では琉球処分以前の沖縄研究だけではなく、近現代の沖縄研究者も多くいることから、カッコ付きの沖縄を採用することになった。今後、当研究会は、「UTCP「沖縄」研究会」と表記することになった。
4、
同じく崎濱さんより、2014年度の輪読テキストについての提案がなされた。昨年度は折口信夫『国文学の発生』を用いたが、今年度は柳田国男の『海南小記』を提案した。著者の柳田は大正9年、沖縄本島及び周辺の島々を訪れ柳田民俗学の根幹をなす重要な発見を行っている。この時の体験をもとに書かれた本書は紀行文ではあるが、沖縄研究をするうえで重要な位置を占めることからも、輪読として行いたいとの旨である。
崎濱さんのこの提案が承認されて、2014年度の輪読は『海南小記』と決まった。
報告:内藤久義