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時の彩り(ラスト・ラン) 162

2014.06.16 小林康夫

★駒場博物館の「《終わりなきパリ》、そしてポエジー」展関連の二つのイベントがあった先週。11日水曜に加藤道夫さんとル・コルビュジエをめぐって。14日土曜に、これはUTCP企画でもありましたが、画家の阿部浩さんをお招きして、リトグラフの魅力について語っていただきました。どちらもわたしは、司会兼お話しの相手役。そしてどちらも、長年、ご自分がエネルギーを傾けてきた対象についての熱い語り、それについて語ることが喜びです、というのが全身から溢れている。それに接して、わたしもまた嬉しかったですね。大学という場所はこういう知的な喜びが満ちあふれているところでなければならない、ずっとそう思ってやってきたのですが、それが実現するとわたしは嬉しい。こういう場を開き保つことこそ、わたしが駒場という場でやってきていること。物語論で言うところのadjuvant(補助者)という役どころですね、場合によってはトリックスター。でも、わたし、これがいちばん得意。

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どちらのイベントも学外から多くのみなさんに来ていただいたのですが、そのレベルが高かった。ル・コルビュジエのときは、質問する方々がみんな専門家。しかし学会にありがちな剣呑な些事への質問ではなく、おおらかなポエジー溢れる展開でした。ポエジーが海を超えて砂漠にまでひろがったし。土曜もそう。阿部さんは、石板はもちろん、参考作品も多数持ってらして、石に描いた絵のうえに松脂、タルクの粉末をまぶして硝酸を垂らしたアラビアゴムを塗るというまるで魔法のようなプロセスを実演してくれたりもした。それぞれの会のあとの懇親会も楽しく、夜は更けていきました。

★それに加えて、これを書くと「遊んでばかり」と言われそうだが、先週は、美酒の週。月曜には、わたしが選考委員をつとめている、シャンパーニュ委員会の「La joie de vivre(生きる歓び)」賞の授賞式がありました。これも6回目で、震災の年はなかったので、もう7年も続いています。今年の授賞者は、建築家の坂茂さん。建築界のノーベル賞と言われるプリツカー賞の今年の受賞者ですが、その発表よりも早く授賞を決めたというのが、われわれ選考委員の誇り。ホテル・パークハイアットで行われた式は、もちろん特上シャンパーニュが何種類もふるまわれました。じつは、木曜にも小西国際交流財団の第19回「日仏翻訳文学賞」の授賞式がホテル・オークラで。今年の授賞者は、駒場の教養学科フランス科の、わたしの同期生でもある朝比奈弘治さんでした。この賞にわたしは直接、関わっているわけではないのですが、関係者の多くが友人知人、「久闊を叙する」を口実に、わがgourmandiseの声に屈した次第。こちらのシャンパーニュもおいしかったが、料理が素晴らしかったですね。

★いや、遊んでばかりなどとは言わせない。美酒の合間に、大和書房の本のための語り下ろし(月曜)をし、さらには美術論のテクストと悪戦苦闘(なにしろセザンヌが相手)。Clément Rossetの « L’invisible »を読んだりもしています。

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